前向きに読み解く経済の裏側

2019年6月17日

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残骸たちの整理も順調に

 市場の混乱が1日で終わったため、実体経済には特に問題は生じなかった。日銀券を実物資産に換えよう、という動きによって物価が上昇したものの、翌日には日銀券が紙屑にならないことがわかったため、そうした動きは止まり、物価は安定を取り戻したのである。

 投資家たちは、大きな損失を被った。特に損失が大きかったのは、外国人投資家であった。10ドル持って日本に来て、それで1000円分の国債を買ったのだが、それが300円でしか売れず、それを1ドルに替えて本国に逃げ帰ったわけだ。

 国内の投資家も、多くは莫大な損失を被った。保有していた国債が購入価格の約3割でしか売れなかったのだから。しかし、投資は自己責任であるから、政府が投資家の心配をする必要はない。

 多くの従業員を抱える製造業が倒産すれば日本経済への影響は甚大だが、投資家が破産しても影響は限定的である、ということも、政府の安心感につながっているのである。

 もちろん、物事には例外というものがある。銀行である。銀行には自己資本比率規制というものがある。大胆に言えば「銀行は自己資本の12.5倍までしか融資をしてはならない」というものである。

 つまり、銀行が国債取引で巨額の損失を出し、自己資本が減ると、貸せる金額が減ってしまうので、「貸し渋り」を強いられるのだ。それによって融資を受けられなくなった企業が倒産するようなことがあってはなるまい。

 というわけで、政府が銀行に出資をして銀行の自己資本を回復させることとなった。議決権のない優先株を銀行に発行させて政府がそれを購入し、将来銀行が利益を稼いで優先株を買い戻すこととなったのである。

 こうして、銀行は貸し渋りをする必要もなくなり、日本経済は何事もなかったように平静さを取り戻したのである。

 めでたし、めでたし。

  
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