韓国の「読み方」

2019年6月18日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

日本で拡散する先行きへの悲観論

 日韓関係が悪いという認識は両国とも昨年より増え、ほぼ同水準にある(日本40.6%→63.5%、韓国54.8%→66.1%)。一方で日韓関係が「重要だ」という回答は、日本50.9%、韓国84.4%で、どちらでも多数派だった。日本の方が少ないのは、「どちらともいえない/わからない」が27.1%にのぼり、韓国の6%より20ポイントも多いことが影響していそうだ。この項目に限らず、日本人より韓国人の方がはっきりと選択する傾向が強い。

 ただ、将来展望などでは日韓両国に温度差が見られた。「良くなっていく」という回答を前年と比較すると、日本が18.3%から12.1%に落ち込んだ一方、韓国では25.1%→23.4%と横ばい。「悪くなっていく」という悲観論は、日本で13.5%→33.8%と大幅に上昇したものの、韓国では13.5%→18.7%と小幅上昇にとどまった。

 韓国人に危機感が薄いのは、日韓関係の悪化が韓国にとって切実な問題だという認識が薄れてきているためだと思われる。この連載で繰り返し指摘してきたように、韓国にとって対日関係が重要だという意識はこの30年間で薄れている。だからこそ文在寅政権は、対日関係の悪化に有効な手を打てなくても平気な顔をしていられるのである。そして、これもまた連載で指摘してきたところだが、日韓関係の悪化は構造的変化に伴うものなので両国で政権交代があっても簡単には流れを変えられない。日本の専門家の間で多く語られているこうした認識が、日本の世論に一定の影響を与えた可能性もありそうだ。

日本の「日韓関係が重要」は情緒的

 日本の世論が大きく動きやすい背景には、「なぜ日韓関係は重要なのか」という理由の認識も影響しているかもしれない。

 この調査には、「日韓関係は重要だ」と答えた人に理由を2つ挙げてもらう項目がある。日本は「隣国だから」(61.5%)と「同じアジアの国として歴史的にも文化的にも深い関係を持つから」(50.3%)が群を抜いて高い。その次にくる「米国の同盟国同士として安全保障上の利益を共有しているから」は22.4%だ。まずは「隣人なんだから」という情緒先行だ。実利が伴っているわけではないから、悪いニュースを見ると「もう嫌だ」となりがちだと考えられる。

 これに対して韓国側は「経済面での相互依存関係を強めており共通の利益が多いから」(45.8%)が最多で、「重要な貿易相手だから」(43.7%)、「隣国だから」(40.1%)、「同じアジアの国として歴史的にも文化的にも深い関係を持つから」(39.5%)と続く。日本の重要度が低下しているといっても相対的なものなので、改めて聞かれれば経済面での実利に思いが至るということだろう。

 現実には、日韓の経済的な相互依存は深まっているので、実利の面で両国にとって日韓関係は重要だ。日本にとってはさらに、安保面での理由が大きい。こうした点については、「日韓関係の構造的変化を考える」と題して4回の連載に書いたので参照していただきたい。

 この世論調査は、日韓両国の政治家や研究者、ジャーナリストが討議する「日韓未来対話」の材料として実施されている。こうした対話は近年、日本側のフラストレーションを韓国側にぶつける場になっているのだが、多少なりとも韓国側に考えてもらう契機になるので大切だ。今年は6月22日に東京で開かれるので、そこでの討論の内容も何らかの形で報告したい。

  
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