WEDGE REPORT

2019年6月23日

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風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

空港で想定外の事態が

大森林が続く緑のマギンダナオ州

 4カ月後、私はコタバト市を目指してマニラのニノイアキノ国際空港を3時間遅れで離陸したフィリピン航空エアバスA320の機上にいた。ヒジャブで頭を覆った女性の数からすると、旅客の中でイスラム系は3分の1前後だろう。男性はその宗教を見分けるのは難しい。

 離陸体制に入った飛行機の眼下には、永遠と思われるほどの緑が広がり、青い線があちらこちらに走っている。海を臨む大地に、広大な森林が鬱蒼と繁茂し、その間を河川が縦横に流れているのだ。アジアの原風景といえるかもしれない。飛行機がいっそう高度を下げると、真っ白なモスクが目をかすめる。

 この地にイスラム教が伝わるのは、1475年、マレーシアからイスラム教徒が到着してからである。17世紀中盤、スルタン・クダラットの時代にマギンダナオ王国は、周辺国との交易で繁栄を迎える。その後カトリックのスペインにルソン島などが植民地化される中、この地では300年以上に渡ってイスラム教VSキリスト教の勢力争いが続いた。

 2022年には新たにイスラム自治政府が発足する。目的はイスラム教徒のアイデンティティの承認、治安の安定、投資活性化、生活水準の向上などである。移行期にある政府の新庁舎はこのコタバト市にある。

 コタバト市のアワン空港に着陸し、機内から出て空港施設まで歩く。日射しがマニラよりもずっと強い。滑走路にいるフィリピン航空の職員が、女性には日傘を差し出してくれる。

暑いので傘を差し出してくれるコタバト アワン空港

 荷物の受け取り場は狭いこともあり、大混乱である。人込みの中に、フィリピン当局のツテを頼って依頼していた治安関係のエスコートを探す。だが、私の名前を書いたネームプレートを持っている人間はいない。駆け寄って来る者もいない。

 ツーリストオフィスらしきところがあるが、誰もいないし、まるで残骸のようなありさまである。

 しかたがない。タクシーのようなもので行くことにした。空港警備の職員に頼むと、空港施設への通路で待ち構えていた人の好さそうなおっちゃんを紹介してくれた。ベネズエラのような職員が信じられない国では、このような行為は致命傷になる。

 20分ほどでホテルに着いた。小さなホテルでスーパーマーケットと同じ建物に同居している。レストランはない。レセプションでは3人の高校正に見える女性がだべっている。チェックインし、スーツケースを持って3階の階段を上る。ドアの鍵はいちおうは電子式だ。部屋に入り、ほっとする。第一関門終了。ところが……。

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