2024年4月20日(土)

中東を読み解く

2019年7月9日

核爆弾製造までの時間

 イランの合意破りは7月1日と7日に明らかになった。まず1日、イランは核合意で定められた低濃縮ウランの貯蔵上限300キロを超えたことを公表、さらに7日には「3.67%以下」に設定されていたウラン濃縮度上限をこの日のうちに超過させることを発表した。

 核分裂反応を示すウラン235は自然界にあるウランにはわずか0・7%しか含まれていない。この235の比率を高め、濃縮度90%になったものが核爆弾に使用できる。原子炉用は濃縮度5%、医療用アイソトープは濃縮度20%とされる。イランは今回、無制限の濃縮を明らかにしたものの、実際には5%程度までの濃縮に留めると見られている。段階的に要求をつり上げる余地を残すことと、米国やイスラエルからの軍事攻撃を回避するためだ。

 だが、濃縮度の上限を取り払ったからといってすぐに核爆弾が製造できるわけではない。専門家らによると、核爆弾1個を製造するためには低濃縮ウランが1200キロも必要になるという。現状で、イランが生産できる低濃縮ウランは1日1キロほど。つまり、これだけでも核爆弾保有には数年かかるという計算になる。

 核合意はそもそも、イランが合意を破って核開発に乗り出しても1年はかかるというスパンで設計された。1年あれば、核施設を軍事的に攻撃する時間や経済的に締め上げて、イランの核開発を阻止できるという思惑だった。現実には核爆弾製造にはこれ以上の時間が必要になるということだ。


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