中東を読み解く

2019年7月9日

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打つ手乏しいトランプ

 トランプ大統領は1日の低濃縮ウランが上限を突破したという発表に対し「イランは火遊びをしている」と非難、その後「手痛いしっぺ返しを食らうだろう」「気を付けろ」などと軍事行動を仄めかしてきた。実際、6月20日の米無人偵察機の撃墜事件では、いったんはイランへの限定攻撃を承認し、攻撃10分前に撤回するという緊急事態も起きている。

 ペルシャ湾では、米国がイラン革命防衛隊の仕業とするタンカー攻撃も発生しており、いつ軍事的な衝突事件が起きてもおかしくない状態が続いている。しかし、トランプ大統領が望んでいるのはあくまでも限定的な攻撃だ。数カ所を攻撃し、「イラン側を沈黙させ、大人しくさせる」(ベイルート筋)ことが狙いで、全面戦争は全く望んでいないだろう。

 だが、大統領が限定的と想定して攻撃しても、イラン側は全面攻撃とみて報復する可能性がある。そうなれば、ペルシャ湾から地中海に至る一帯に戦線が拡大しかねない。湾岸にある米軍基地やイランの宿敵サウジアラビアやイスラエルなども巻き込んだ戦争になる恐れがあるということだ。

 特に米国が気にしているのは中東各地に広がるイラン支援の武装勢力や民兵の動きだ。米紙によると、5月14日のサウジのパイプラインへの無人機攻撃は当初、イランが支援しているとされるイエメンの武装勢力フーシ派による犯行と見られていたが、米国の最近の調査で無人機はイラクから発進したドローンであることが分かった。

 イラクのイラン配下の民兵による無人機攻撃と見られるが、中東各地には、こうしたイラン支援の武装勢力がおり、米国や米同盟国への攻撃がいつでも可能であることをパイプライン攻撃は示している。

 トランプ氏が全面戦争を望んでいないのは再選に向けた選挙が来年に迫り、米兵をつぎ込む戦争は支持を得ないと見極めているからだ。かといって追加制裁をしようにもほとんどやりつくしており、事実上打つ手がないジレンマ状況。「夏季シーズンに何かが起きる」(専門家)というチキンゲームの行方はどうなるのだろうか。

  
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