2024年3月4日(月)

Wedge REPORT

2019年7月12日

年金をもらえるわけ

 住所がなければ生活保護ももらえないし、年金ももらえないはずだが。

「年金はね、あれさ、高田馬場のアパートの住民表を見せればこっちでも手続きできるのさ」

 年金は東京に出て来て、4年ほど野村系のコンピュータ会社に勤務し、60歳で定年退職したのだという。職務はというと、

 「会計とかいろいろな紙、スリップが出るだろう、その仕分けをやっていたんだ」

 野村系ならば、少なくとも退職金が出たであろうし、失業保険ももらっていたわけだ。そして年金もある。今の私と違い、彼は60歳から国民年金を満額もらっていたに違いない。安定した収入のある生活が羨ましくなる。

 「家族はここにいるのを知ってるの?」

 「ああ、知ってるよ。女房と子供はね。孫は知らないけど」

 なるほど、家族公認の元社長の年金ホームレス…

「年金」の年金哲学

 ある日、「年金」といっしょに、専門家、有識者による自然保護に関する対談を聴きに銀座へ足を運んだ。植林実践者の「年金」は、彼らの話は現実離れした机上のおとぎ話でしかないと、不満げだった。帰路、なぜ公園に住むのか、年金の年金哲学を聞いてみた。

 「年金っていってもたかがしれているよ。アパートを借りたら、安くても年50万ぐらいかかるだろう。もうそう長くはないんだから、年金で旅行をしたり、好きな競艇にでも行ったほうがいいよ。でも、まあ、戸田や江戸川に行って損ばかりしているけどな。時々、これならアパートに住んだほうがよかったかもって思うけど」

 年金を博打で散財しているのである。そして幾分ズルがしそうな目を私に伸ばし、

 「でも、もしアパートに住むならば、ちょっと働かなきゃねぇ」といい、付け加えた。

 「こづかいでもいいからおれを使ってくれないかい? 給料はいらないんだよ。アパートさえ用意してくれれば。会計とか、会社設立とかはみんな分かるよ。でもパソコンはできないけどね」

 当時、失業者でごった返していたハローワークに行った時、説明会で私を含めた求職者は係官に厳しくいわれたのである。

 「35歳以上の人はここにきても仕事はありません!」

 ならば、起業するしかない。そこで元社長の「年金」に私はあれこれ相談していた。だが、今のところただの失業者なのだから、「年金」のためにアパートを借りるような余裕はなかった。

 そこで話題を変えた。

 「北海道には帰らないの?」

 「もうそろそろ帰えるさ。女房の年金が出たらね。年金事務所にいって調べたけど、あと数年たたなきゃもらえないんだよ。おれ一人の年金じゃろくな暮らしできないからな。それまでは帰れないよ。保証人は借金を返しただろうから、顔を合わせたくないけど」


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