World Energy Watch

2019年7月17日

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ゲイツの新型炉

 米国の原子力発電は日本の4倍を超える米国の全発電量の約20%のシェアを占め(図)、30州で世界一の設備数98基が稼働している。エネルギー省のデータによれば、2017年の原子力発電の平均コストは1kWh当たり2.44セント。火力発電の平均コスト3.54セントよりも低いが、1979年のスリーマイルアイランドでの事故以来30年間に亙り新規建設が中断したため既存設備の老朽化が進んでいる。既存設備については60年、さらに80年運転が視野に入っているもの、運転期間延長の投資が必要であり、IEAによると延長に伴いコストは1kWh当たり4セントに上昇すると予想されている。さらに、競争力などの理由により今後閉鎖される原発も出てくるとみられている。

 新規原発の建設も開始されたが、30年間の建設中断の影響による工期の遅れと工費の増大が発生し、現在建設が行われているのは2013年に工事が開始されたジョージア州のボーグル原発3、4号機(いずれも125万kW)のみだ。ゲイツ氏は、安全性により優れた新技術による原子炉を開発し建設しなければ温暖化対策を進めることは難しいと考え、今年1月ワシントンDCを訪問のうえ共和、民主両党の議員に面談し、原子力発電の新技術開発への支援を要請したと報道された。

 ゲイツ氏が会長を務めるテラパワーが開発を進める新型炉TWRは、核燃料の廃棄物を利用するため、新規燃料が点火時以外は必要なく既に米国内にある廃棄物を利用可能といというメリットを有している。ゲイツ氏はワシントン訪問時、彼自身が10億ドル(1100億円)、ファンドから10億ドルを投じるので、連邦政府からも数十億ドルの補助金支出を考慮して欲しいと上下院議員に要請したとワシントン・ポスト紙は報道している。

 同紙はTWRについては、実用化が難しいのではないかとの専門家の批判も掲載している。また、3年前にテラパワーが中国広核集団(CGN)と合弁事業体を結成し締結した実験炉建設契約が、米中貿易摩擦を受けた米国政府が中国との原子力技術の共有を禁止したため実質的に失効することもゲイツ氏には痛手だ。ただ、米国議会は小型原子炉(SMR)などの新型原子炉技術への助成を共和、民主両党挙げて支援している。

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