躍進するラグビー部と進む合併への暗躍
第5話(8月11日)に至って、アストロズの存亡と合併劇の裏でうごめく陰謀の端緒が明らかになっていく。
アストロズのGMに就任した君嶋が最初に直面した難題は、監督選びだった。前のGMから引き継いだふたりの監督候補に君嶋はしっくりとこなかった。ふたりに優勝経験がなかったからだ。
「アストロズを立て直すには、優勝の経験者でなければならない」
君嶋が白羽の矢を立てたのは、大学の同期である城南大学ラグビー部を大学三連覇させた、柴門琢磨(大谷亮平)である。それにもかかわらず、OB会との関係が悪化して監督の座を追われた。君嶋にとって柴門は因縁の関係だった。大学時代に講義のノートを君嶋は柴門にいやいやながら貸していた。大学時代からラガーマンとして、女子大生に人気だった柴門が嫌いだった。しかも、憧れの女性も奪われた。
私情を捨てて、組織づくりをする――池井戸文学がサラリーパーソンに人気がある、正統派の経営哲学の一環である。
監督に就任した柴門は、データ分析による理論的な戦略とスピードを重視した現代ラグビーをアストロズにたたきこんだ。日本リーグで破竹の14連勝を果たして、最終戦日本モーターズのサイクロンズとの優勝決定戦となった。奇しくもサイクロンズの監督は、柴門を城南大学から追放したOB会長の津田三郎(渡辺裕之)だった。実力では、サイクロンズがアストロズを圧倒していた。
君嶋は、柴門と津田の両監督の共同記者会見を仕掛ける。
アストロズの躍進の要因を尋ねられて、津田はこういう。
「城南大学のラグビーがアストロズに伝わったということでしょう。
柴門はいう。
「わたしひとりの力ではありません。新しいGMと磨けば光る選手がいたからです。ラグビーは進化しています。理論に基づいたラグビーでたたきつぶします」
津田 「柴門監督は礼儀を知らない」
柴門 「勝つことこそ、礼儀です。結果はグラウンドでだします」
チームに火がついた。「これほど勝ちたいと思ったことはない。監督とGMのために絶対に勝とう!」と。リーダーの言葉こそ、組織を動かすものである。
試合は、アストロズがワントライを奪えば逆転勝ちのところ、最後のトライがビデオ判定の結果、トライにならず、敗戦となった。
合併劇のほうはどうか。両社の最終的な取締役会で決定してから、リリースされるのが本来のありようだが、事前に何者かによって新聞にリークされた。そして、滝川常務(上川)とカザマ商事の風間社長(中村芝翫)は、料亭で密談をこらすのだった。
ラグビーW杯が9月から始まる。筆者は、釜石と横浜会場でそれぞれ1試合を観る。今回のドラマは、ストーリーの展開の上で、ラグビーのルールや戦術がわかるようになっているのが楽しい。
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