WEDGE REPORT

2019年8月20日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

トランプ大統領の方針転換も影響?

 首相が抑制的な反応を示している理由の一つにあげられているのが、トランプ大統領の対応だ。

 大統領は一貫して〝寛容〟な姿勢を取り続けている。日米のメディアによると、7月25日の発射の後には、「短距離であり、多くの国が保有している」と受け流し、8月2日、2度にわたった発射実験の後には、「国連安保理決議違反かもしれないが。金正恩委員長は私の信頼を損ね、失望させたいとは思っていない。(シンガポールで)われわれが握手した際には短距離ミサイルに関する議論はなかった」と述べ問題視しない姿勢をみせた。

 この発言は、第1回米朝首脳会談以後、短距離ミサイルについて米国が事実上容認する姿勢に転じたことをうかがわせる。

 トランプ大統領はそもそも、ミサイルにとどまらず、北朝鮮の核開発全体について、当初目的としていたCVID(完全かつ検証可能、再開不可能な非核化)を転換、小規模核施設廃棄、ICBM発射実験の中止,核実験の凍結などを北朝鮮が受け入れれば、短距離ミサイルは容認し、制裁を一部緩和する方向に方針を大きく転換したといわれている。

 大統領は2019年8月9日、「(北朝鮮は)核実験をしていないし、ミサイル発射も短距離だけで長距離ではない。(アメリカ人の)人質もいない」と述べているが、方針変更の根拠としては十分な発言だ。

 安倍首相は昨年からの一連のトランプ大統領との会談で、方針転換について説明を受けていたとみられる。首相は、それに同調したわけではあるまいが、米国が短距離ミサイルを容認するなら、日本だけが廃棄を求めても実現に時間がかかることや、脅威は脅威として、日本を標的に発射することは実際問題として容易ではないことを考慮、とりあえずは、トランプ大統領と足並をそろえておこうと考えたのかもしれない。

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