ドイツの場合、住民1人当たりの地方税収は、財政で調整する前では上位4州と下位4州の税収平均で1.245倍の格差があるが、調整後には格差が解消する。要するに、住民1人当たりの地方税収がどの州でも同じになるように財政で調整している訳だ。カナダやフランスでも格差が縮まる。アメリカはまったく縮まらない。なるほど、アメリカは個人だけでなく、州も独立独歩で生き抜いている訳だ。
それに対して、日本では財政調整前には、地方税収上位5県と下位5県の平均には1.835倍の格差があるが、財政調整後には0.714倍になる。すなわち、税収格差は逆転して、上位5県の平均税収が下位5県より少なくなる(財務省財務総合政策研究所「地方財政システムの国際比較について」02年6月21日)。
これほど極端な財政調整をしている国は他にない。
負担のない収入が自治を衰退させる
大阪の橋下徹市長が独裁者であるという議論があるが、橋下市長は前知事として大阪府の歳出をカットし、今度は大阪市の歳出をカットしようとしている。そもそも議会とは、独裁者である王様が勝手に税金を取って贅沢をしたり、戦争をしたりできないようにするために生まれたものだ。ところが、日本では、議会が地方自治体の職員とともに歳出を増やそうとしている。それを抑えようという橋下市長が独裁者なのか。何かおかしくはないか。
結局のところ、地方交付税という地方住民にとって負担のない税収があり、それを使うことが地方議会と自治体の役割になってしまったことに根本的な問題がある。しかも、交付税にしろ他の補助金にしろ、地方には裁量の余地がほとんどない。これでは、ともかく寄こせの大合唱になるしかない。
今更、交付税をなくすことはできないだろう。しかし、交付税を本来の税の一定率にして、国の財政に負担をかけないようにすることはできる。その中で、地方の裁量権を拡大すれば良いのではないだろうか。
こう言えば、いい加減な市長や議会が給与のお手盛りをしたり、どうしようもない第3セクターで無駄遣いをするかもしれない。そうなっても良いのかという反論があるかもしれない。
しかし、現状がすでにお手盛りなのだ。地方議員1人当たりの年間報酬平均(年金コストを含む)は日本が762万円とずばぬけて高く、韓国240万円、アメリカ65万円、フランス、スウェーデン、スイスなどはほぼ無報酬である(渡部記安『中央議会(国会)・地方議会議員年金制度』朝陽会、2010年)。
そもそも、住民が市長を監視するのが自治である。一生懸命監視しなければ、国からの交付税を自分たちの代表が無駄遣いするかもしれないし、住民のためにうまく使ってくれるかもしれない。そのような真剣勝負の状況が生まれて初めて地方自治が発展する。
さらに、国からもらった補助金ではなくて、住民から税を取って、その税の使い道を真剣に考えるのが自治ではないかという人もいるかもしれない。その通りだが、まず、その前段階から始めるしかないではないか。
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