中東を読み解く

2019年10月7日

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腐敗に絶望する若者

 イラクでの反政府デモはこれまでにも再三にわたって起きている。2016年にはバグダッドの議会にデモ隊が乱入する騒ぎにまでなった。昨年には南部バスラで電気や水道などインフラの改善を求めたデモが頻発した。こうしたデモの大きな要因の1つは政府に対する不信感だ。国の収入の柱である石油売却収入が適正に使われていないという強い不満が国民にある。

 イラクの石油生産量は日量452万バレル(2017年)で、石油の輸出で567億ドルも稼ぎ出している。しかし、3300万国民の約半分の暮らしは厳しい。政府や企業に縁故やコネがなければ就職も難しく、低所得者層や若者の鬱屈感が高まっていた。

 特に若者たちの政府や社会の腐敗に対する絶望感は深刻だ。今回デモに参加している若者たちは米軍がイラクに侵攻した2003年前後に生まれた人が多い。米軍の侵攻でフセイン独裁政権が倒れた後、スンニ派過激派と米軍との戦闘が長年続き、その後に過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭してテロとの戦いが始まり、2年前にやっと平和が訪れたばかりだ。

 つまり、若者たちは生まれてからずっと、戦乱の中で暮らしてきたということになる。しかし、こうした長い戦乱からやっと抜け出た先に待っていたのは、仕事もなく、将来の展望のない厳しい現実だった。若者たちにとって、垣間見える政府の腐敗ぶりは絶望以外の何物でもなかっただろう。絶望した若者に来世での幸せを説いて、勧誘するのは過激派の常とう手口でもある。

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