中東を読み解く

2019年10月15日

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「戦闘に巻き込まれないことが賢明」とトランプ氏

 シリア北部が大混乱に陥っているのはトルコ軍の侵攻に加え、トランプ大統領が12日、シリア北部に駐留していた1000人の部隊を全面撤退させることを命じたからだ。大統領は米部隊がトルコ軍とクルド人人民防衛隊(YPG)との戦闘のはざまに置かれかねないとの軍の報告を受け、撤退を決断したという。部隊は30日以内に撤退するよう指示を受けており、その準備に追われている。

 トランプ大統領は13日、バージニア州の自分のゴルフ場にプレーに出かける前にツイート。「戦闘にかかわらないことが賢明だ」と撤退命令を正当化し、米国を中東の戦争に引き入れた歴代政権を非難した。またクルド人を見捨てたと批判されていることについては「クルド人はトルコと何年にもわたって戦闘をしてきている」と突き放した。

 大統領は、イランの動きを監視するためシリア南東部タンフに駐留する150人の部隊については、残留させる方針だ。しかし、北部からの全面撤退はアサド政権を支援するロシアとイランにとっては願ってもない展開であり、米国の対シリア政策の大転換と位置付けることができるだろう。内戦終結後の将来のシリア和平に対する米国の影響力が弱体化するのは免れない。

 今回の決定については、国防総省やシリアに駐留する特殊部隊「グリーンベレー」も反対が圧倒的だ。米紙によると、現場の将校らから「米国の良心の汚点」「同盟者であるクルド人を見限っての撤退は恥だ」といった大統領に対する批判の声が漏れている。

 こうした中、米国に裏切られ、見捨てられたクルド人勢力は地中海に面したラタキアのロシア軍基地で、敵対してきたアサド政権との仲介をロシア側に依頼。ロシアのとりなしでアサド政権と手を組んだ。全土の奪回を目指すアサド大統領もトルコの侵攻は座視できないところであり、シリア、クルド人の両者にとって「敵の敵は味方」というわけだ。クルド人はアサド政権軍を早速、その拠点であるアインイーサなど支配地域に招き入れた。

 一方、エルドアン大統領は侵攻に対する世界からの批判に猛反発。「テロリスト国家をシリア北部に創設させない」とあくまでも侵攻作戦を続ける構えだ。しかし、クルド人勢力とアサド政権軍との「反トルコ連合」ができたことで、今後、戦闘の規模が一気に拡大する恐れも強い。

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