中東を読み解く

2019年10月15日

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 トルコ軍のシリア侵攻作戦が続く中、トランプ米大統領はシリア北部に駐留していた米部隊1000人を完全撤退させることを命令した。これに対してクルド人勢力はトルコに対抗するため、アサド・シリア政権と手を結び、政権軍が北部地域に進軍した。情勢が目まぐるしく転変する一方で、トルコ配下の民兵の残虐な“蛮行”が明らかになり、国際的な批判が出ている。

トルコ政府に雇われたとみられる民兵(AP/AFLO)

ISの“狂気”を彷彿させる

 10月9日に侵攻作戦「平和の春」を開始したトルコ軍は先兵として「自由シリア軍」などシリアの反政府アラブ人民兵を使って進撃、これまでに「110キロ平方メートルを制圧した」(エルドアン・トルコ大統領)。人権監視団体などによると、13日までにクルド人戦闘員104人、民間人60人が死亡、約13万人が難民となった。

 エスパー米国防長官によると、トルコ軍は国境から30キロ、長さ440キロの地域を占領する計画で、すでに国境の戦略的な要衝タルアビヤドなどを制圧した。だが、進撃の中でアラブ人民兵がクルド人捕虜を乱射して殺害するなどの残虐な「戦争犯罪」(同国防長官)も起きている。

 ネットに出回った1つの動画によると、民兵が後ろ手に手錠を掛けられた捕虜を銃撃する際、携帯で銃撃のもようを撮影するよう仲間に叫んでいる。銃撃した民兵が自らの行為を誇るためにネットに掲載した可能性が強い。かつての過激派組織「イスラム国」(IS)の“狂気”を彷彿させる行為だ。

 また別の動画では、銃撃で死亡した遺体をまたいで車に近づく民兵らの姿が映され、後部座席から女性の声が聞かれた。この女性はクルド人の著名な政治家ヘブリン・カラフ氏と見られている。同氏の遺体は後に別の場所に遺棄されているのが見つかった。民兵が殺害したことが確実視されている。

 米メディアなどによると、両動画とも撮影されたのはタルアビヤド南方らしく、同氏ら民間人9人が民兵によって処刑されたもようだ。米当局者は「奴らはクレージーで、信頼できない」と指摘した。トランプ政権はトルコ政府に対し、こうした民兵を統制するよう要求した。

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