中東を読み解く

2019年10月15日

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混乱後目にIS復活が現実味

 シリアの混迷が深まるとともに、心配されていたISの復活が現実味を帯び始めてきた。トルコ軍の攻撃が激化した隙をついて、北東部国境の町カミシュリにある刑務所から11日、IS戦闘員5人が脱走。アインイーサにある収容所からも戦闘員の家族ら約750人が逃走した。

 シリア北東部でクルド人が管轄、警備していたIS関係の刑務所、収容所は約20カ所。戦闘員1万1000人、子供を含む家族ら10万人が収容されている。戦闘員の大半はシリア人とイラク人だが、2000人は50カ国から来た外国人だ。家族の最大の収容所であるアルホル・キャンプでも大規模な脱走騒ぎが報告されている。

 爆弾テロも続発している。カミシュリでは脱走事件があった日に車爆弾が爆発し、15人が死傷する事件が発生。有志連合の基地があるハサカでも爆弾テロがあった。シリア北部やイラク西部には、ISの「休眠細胞」が数多くあるとされ、脱走した戦闘員らはこれら闇組織を頼るものと見られている。ISの指導者バグダディも依然逃走しているが、トルコ軍の侵攻と米軍の撤退による混乱は彼らにとっては僥倖だ。

 米国は収容されているISの幹部ら約60人を国外に連行して調べる予定だったが、クルド人が引き渡しを拒否し、西側人質を殺害したことで知られる英国人戦闘員2人を国外に連れ出しただけだ。クルド人はトルコ軍の侵攻で、米軍と共同で続けてきたIS“残党狩り作戦”を完全に放棄した。ISに対する追及が当面、とん挫するのは確定的だ。

 シリアからの軍撤退に反対して辞任したマティス前国防長官は「撤退は敵を利することになる。ISに圧力を掛け続けなければ、彼らが復活するのは間違いない」と警告している。トランプ大統領の撤退決定はやっと封じ込めた怪物を再び野に放つ危険性を秘めている。

  
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