中東を読み解く

2019年10月28日

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 トランプ米大統領は10月27日朝緊急会見し、生死が謎に包まれていた過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者アブバクル・バグダディが前日、シリア北西部で米特殊作戦部隊の急襲を受け、自爆して死亡したと発表した。ISはバグダディの死亡でその象徴を完全に失うことになった。トランプ氏にとってはシリアからの米軍撤退の追い風になった。

バリシャ村近くの破壊された家(AP/AFLO)

追い詰められ3人の子供を道連れ

 大統領の発表によると、バグダディの隠れ家を特定する作戦は2週間前から始まった。当日は米軍部隊が8機のヘリコプターに分乗し、急襲の現場まで行った。大統領やペンス副大統領、エスパー国防長官らがこのもようをホワイトハウス地下の戦況分析室で見守った。国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの殺害作戦が行われた時も、オバマ前大統領らが同じように作戦を監視していた。

 大統領は明らかにしなかったが、他の情報によると、バグダディの潜伏先はトルコ国境まで約5キロのシリア北西部イドリブ県のバリシャ村だった。ヘリはシリアに介入しているロシアの管轄空域を飛行するため、ロシアから攻撃を受けないよう、作戦に先立って「大切な任務」と伝え、了承を得た。急襲の米部隊は「デルタフォース」が中心だった。

 バグダディの潜伏先にヘリが到着した際、地上から銃撃を受けたが、米側に損害はなかった。この際、IS戦闘員ら約10人が殺害された。潜伏先の建物の正面入り口には、わな爆弾が仕掛けられている可能性があったため、米部隊は建物の側壁を爆破し、そこから突入した。

 バグダディは、軍用犬に追われて、建物から通じたトンネルに逃げ込んだが、トンネルは行き止まりになっていた。追い詰められたバグダディは3人の我が子を道連れに、身に着けていた自爆ベストを爆破し、吹っ飛んだ。遺体の一部のDNA鑑定でバグダディであることが特定されたという。

 大統領はバグダディが終始「泣き叫んでいた」とし、「犬のように死んだ」「臆病者のように死んだ」と述べた。さらに「異常で、邪悪なヤツだったが、今や消え去った。米国にとっては素晴らしい日になった」と成果を誇示した。大統領はバグダディが死亡したことを、シリアからの米軍撤退の“大義名分”にしたい考えで、撤退の動きが加速すると見られている。

 米紙などによると、作戦の発端はイラク情報当局がISの捕虜の尋問から、バグダディの隠れ家数か所を突き止めたことだという。米部隊が急襲したのはそのうちの1つだった。バグダディは米部隊の急襲作戦の48時間前にその隠れ家に到着したばかりだった。

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