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田部康喜のTV読本

2019年11月7日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

若手社員の悩みと挫折にサクラは

 サクラの病室を訪ねてくる、同期グループのひとり一人が思い返すエピソードは、1話完結である。また、若い会社員が抱える悩みと挫折、それからの復活をオムニバス風に綴った青春ドラマでもある。

 第4話(10月30日)は、設計部の土井蓮太郎(岡山)の入社4年目の物語である。蓮太郎は、大学も二浪で第1志望も第2志望も落ちて、花村建設に入社できたことによって、人生が変わるかもしれないと考えた。ところが、設計部で求められる1級建築士の試験に落ち続けている。

 職場にもなじめずに、孤独感を深めている。山口県のショッピングセンターの社内コンペに一生懸命に取り組んでいたが、部長がコンペのプレゼンの日時を勝手に変えたうえに、蓮太郎に知らせないといういじめにあう。職場の入り口で、自分に対する悪口を聞いた彼は、かっとなって、カッターナイフで殴りこもうとする。サクラは、それを止めて、右手の親指近くに5針も縫うけがをする。それをきっかにして、ラーメン屋の実家の2階の自室にこもってしまう。

 サクラをはじめ、同期グループの百合(橋本)、葵(新田)、菊夫(竜星)は、蓮太郎を出社させようと説得に行くが拒否される。そこで、サクラがとった行動とは……。

 サクラと同期グループは、蓮太郎の社内コンペの案について、それぞれが得意とする分野の知恵を絞って、魅力ある案にブラッシュアップしたうえで、設計部長に持ち込んだのである。蓮太郎の携帯に百合は「サクラが設計部に殴り込みをかけようとしている」とうそをついて、あわてた彼を会社に来させる。

 「(蓮太郎には)多くの人が興味を引いて協力しようと思うプランを出すことができます。粘り強く、柔軟に対応することもできます」と、サクラは真正面から部長に挑む。

 同期たちの友情とサクラの熱情に、蓮太郎のかたくなな気持ちも溶けていく。

 「いままで本当にすいませんでした。自分は最低のやつでした。自分のことなんかわかってくれる人なんていないとマイナスに考えていました。人の話に耳をふさいで、自分で孤独のなかにとじこもっていました。いま、ようやく夢がみつかりました。いつか同期のサクラに認めてもらえる建物をつくりたいと思います。建物を愛し、仕事に厳しいサクラに」と、蓮太郎は職場の人々に頭を下げるのだった。

 「これからもここで働かせてください」という蓮太郎に対して、サクラは一刀のもとに否定する。

 「それはちょっと無理では。バックもなにも持ってないじゃないですか?」

 ドラマの主題歌は、森山直太朗の「さくら(二〇一九)」。随所に笑いのツボも仕掛けられていて、脚本・遊川の才能が楽しめる。

  
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