中東を読み解く

2019年12月1日

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甘い汁吸う支配層への反発

 学生が今回、デモに参加したのは、米国の制裁により、インフレや失業率の高まりなどで、生活が限界近くまで追い詰められていることが挙げられる。頼みの原油輸出は、制裁前は200万バレル(日量)を超えていたのに、この10月は50万バレルにまで減った。

 デモ隊が最高指導者ハメネイ師の写真を破り、聖域だった宗教学校をも襲撃するという行動を見せたのは、困窮感が深まっているからだろう。背景には、「一般の市民はガソリンの値上げで苦しんでいるのに、ハメネイ師の関係団体や革命防衛隊の関連企業は税金を免れるなど甘い汁を吸っている」(ベイルート筋)といった支配層への反発が強まっていることがある。

 ロウハニ政権はこうした経済的な苦境から脱却しようと、制裁の損失を補てんする仕組みを欧州に迫っているが、うまくいっていない。このため核合意を破棄すると脅し、最近もフォルドウの地下施設でのウラン濃縮再開を決定した。イランは12月6日に、米国を除く核合意の当事者と話会う予定だが、この席では、国連査察の一部拒否というさらなる強硬方針を伝える見通しだという。

 しかし、欧州の救済案がうまく作動しなければ、国内の不満や反発が今以上に強まり、ロウハニ政権は崩壊せざるを得なくなるかもしれない。それを待っているのは革命防衛隊など保守強硬派だ。勢いづいた強硬派が来年2月の国会議員選挙、さらには21年の大統領選挙で勝利するようなことがあれば、イランは核開発の道を完全に再開し、イラクやレバノンへの支配を今以上に強める恐れが出てくるだろう。

  
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