2024年4月25日(木)

WEDGE REPORT

2019年12月17日

導入が急増する再生可能エネルギー

 米国には風力発電あるいは太陽光発電の適地は多くあり、テキサス州、カリフォルニア州などで風力、太陽光発電の導入が進んだ。導入を後押ししたのが連邦政府の投資税額控除あるいは生産税額控除だ。例えば、太陽光発電の導入に際しては投資額のうち30%を税額から控除することが可能になる。控除分に税額が達しない場合には繰り越しも可能だ。

 今年から太陽光発電と共に蓄電池を導入した場合には蓄電池も投資税額控除の対象となったが、電力会社は再生可能エネルギー導入を支える大型蓄電池導入を進め始めた。電力需要量が大きいにもかかわらず再生可能エネルギーが天候上の理由で発電できない時に備え、通常天然ガス火力を需要対応のため用意するが、蓄電池価格の下落により稼働率が低い天然ガス火力を建設するよりも大型蓄電池を導入するほうに経済性がでてきた。この再エネと蓄電池の組み合わせが、石炭州でも石炭火力を駆逐することになるかもしれない。

 全米の中で最も石炭生産が多い州は、年間3億トン以上採炭するワイオミング州だ。電力供給も約85%が石炭火力から行われている。同州に電力供給を行っているパシフィコープは、オレゴン州に本社を持ち米国北西部6州の190万顧客に電力供給を行っているが、10月に発表した長期計画の中でワイオミング州などで風力と蓄電池付き太陽光発電設備導入を進め、石炭火力の閉鎖を早めることを発表した。

 2025年までに350万kWの風力発電設備を建設予定だが、既に140万kWはワイオミング州で建設中、追加200万kWを2024年までに同州で建設する計画だ。さらに、2025年までに300万kW弱、2038年までに630万kWの太陽光発電設備を建設する計画だが、ワイオミング州には2024年から38年の間に142万kWの太陽光発電設備と35万kWの蓄電池を導入する計画になっている。

 パシフィコープは24基の石炭火力設備を保有しているが、16基、280万kWを2030年までに閉鎖するとし、ワイオミング州の5基の石炭火力発電所を予定より早め2028年までに閉鎖する計画だ。石炭が重要な産業であるワイオミング州では州法により石炭火力を閉鎖する前に石炭火力発電設備の購入者を誠意を持って探すことが義務付けられており、パシフィコープはこの義務を果たすとしている。

 全米最大の石炭生産州でも風力、太陽光、蓄電池の大規模導入が進むほど、石炭は米国では競争力を失ってきた。エネルギー自給率が100%に達し、再エネ用の広大な土地に恵まれ、天然ガスがパイプラインで運ばれる米国と自給率10%の日本の事情は異なり、日本では競争力があり、供給源の多様化可能な石炭を市場は必要としている。ただ、米国ではトランプ大統領もボブ・マリーも市場の力に逆らえなかったようだ。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る