2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2019年12月27日

 eスポーツ振興の仕掛け人である富山県eスポーツ連合の堺谷陽平会長は「我々はゲーマー同士のコミュニティーを持っているが、照明、音響などのノウハウがなかったので、地元メディアと一緒にイベントを作ってきた」と語る。18年の同大会は富山テレビ本社ホールで開催し、「地方でもこれほど質の高いイベントができるのか」と、SNSを中心に話題になった。

 富山テレビ放送・山田勉取締役事業局長は「スポーツは地域にとって文化そのものでeスポーツも同様だ。その分野で頑張っている人が地元にいるのであれば、メディアとして応援し続けたい」と参画の意義を語る。

eスポーツで商店街に再び賑わいを

 徳島県では、県庁の職員と青年会議所のメンバーが主導してeスポーツイベントを開催し、人通りの減った商店街の賑わいづくりに取り組んでいる。

 県などが年2回主催するエンタメイベント「マチ★アソビ」において、徳島新聞とともに18年からeスポーツのプログラムを組み込んだ。県スポーツ振興課の加藤貴弘氏は「もともとアニメを中心としたイベントとして根付いてきたが、新たなコンテンツでさらなる地域活性化ができないかと考え、ここ最近盛り上がりを見せるeスポーツに着目した」と語る。以降、「マチ★アソビ」内のeスポーツイベントには毎回1000人が来場している。

 加藤氏がeスポーツイベントを企画した当初、「ゲームを扱うのは行政になじまないのでは」という批判の声もあったという。しかし、このまま何もしなければ街から活気がなくなっていく一方という危機感が加藤氏を動かしてきた。

 加藤氏の動きに呼応したのが、青年会議所の若者たちだ。19年3月に地元企業や大学などと徳島eスポーツ協会を立ち上げ、7月に徳島駅からほど近い商店街を舞台にeスポーツイベントを開催。メイン会場でゲーマーたちがプレイし、それらを通行人が画面で見られるようにしただけでなく、空き店舗などのスペースを活用し、企業や大学、高校がブースを出し、PCゲームやレトロゲームなどを設置。誰でも気軽にプレイできる環境を整えた。

 付近の商店街を含めた休日の通行人口は30年前から減少、18年には約1500人とピーク時から9割以上減少したが、このイベントでは約5000人が来場。久しぶりに賑わいを見せた。

徳島市の商店街では日本初の「eスポーツ県知事杯」が行われた
写真提供:TOKUSHIMA ESPORTS KYOUKAI)

 加藤氏は、「東京で開催したり、民間が主催するわけではないから、多くの有名人を集めたり、多額の賞金は出せない。その代わり、シニアや障害を持つ人たちにも活用してもらうイベントや、ゲームの健康被害について考えるイベントを開くなど、自治体主導だからできることに今後力を入れたい」という。

 大分県eスポーツ連合は、19年3月に別府市でeスポーツイベントを開催した。100人以上が参加し、その半数以上が県外からの参加だった。24時間プレイできる環境を整え、参加者は自分でスマホやゲーム機器を持ち寄るなどして、その場で初めて会う人たちと対戦を通じ交流した。会場には別府ならではの取り組みとして足湯が引かれ、休憩や食事、宿泊の際に参加者が会場周辺の旅館を利用するなど観光施設への波及が大きかったという。

 同連合で会長を務める西村滉兼氏は、「普段別府温泉を訪れることの少ない20代前後の男性が中心で、宿泊施設の関係者も今後のeスポーツでの集客効果に期待を寄せている」という。


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