2024年11月21日(木)

中東を読み解く

2019年12月17日

暗躍する義理の息子トリオ

 両国関係が悪化しても最悪の事態にならないのは両首脳の個人的な絆にあるのはすでに指摘したが、それを支えているのは「3人の義理の息子たち」だ。このトリオが両国の危機の舞台裏で動いており、「今回も暗躍しているのは間違いないところ」(同)だろう。

 ニューヨーク・タイムズなどによると、3人はトランプ大統領の娘婿のホワイトハウス上級顧問のジャレッド・クシュナー氏、エルドアン氏の娘エスラ氏の婿であるベラト・アルバイラク財務相、トルコの富豪の娘婿で、トランプ・オーガニゼーションのビジネスパートナーでもあるメフメト・ヤルシンダグ氏だ。

 3人の関係は2012年に遡る。ヤルシンダグ氏はイスタンブールに高層ビルを建設し、トランプ・オーガニゼーションとライセンス契約。ビルを「トランプタワー」として世に送り出した。オープニングのセレモニーには、トランプ氏や長女のイバンカ氏、クシュナー氏も出席、当時首相だったエルドアン氏がテープカットした。

 ヤルシンダグ氏は2016年の大統領選挙の時、エルドアン氏の側近のほとんどがトランプ氏の敗北を予想していたのに対し、1人ニューヨークに乗り込み、トランプ氏の家族とともにテレビの開票速報を見ていたという。家族ぐるみの親しい付き合いであることを示すエピソードだ。

 エルドアン氏の娘婿アルバイラク氏は米大学に留学後、トルコの大手企業のニューヨーク支店に勤務、04年にエスラ氏と結婚した。エルドアン大統領は自分の後継者とし、まずは15年に国会議員に当選させ、次いで財務相に抜擢した。16年に起きたクーデター未遂事件後の反政府弾圧では、先頭に立って取り仕切り、“影の首相”“エルドアンのクシュナー”と呼ばれている。

 3人は年齢も近いこともあり、親密な関係を深化させた。エルドアン氏がロシアからのS400購入を決断した時、米政府や議会がトルコ制裁に傾き、ペンス副大統領もアンカラを訪問して購入しないようトルコ政府に強く警告した。

 こうした中で、3人はトランプ大統領が制裁に反対するよう説得工作を開始、クシュナー氏が大統領執務室でアルバイラク財務相らとトランプ氏を極秘に会わせた。アルバイラク財務相は「トランプ氏はトルコの方針に理解を示してくれた」(米紙)と語ったという。トルコ大統領のスポークスマンもトランプ氏が制裁回避のために介入を約束したと述べた。

 こうした工作が成功してか、トランプ氏は一貫して対トルコ制裁には消極的な姿勢を示し続けている。ボルトン前大統領補佐官は「トランプ氏は政策のこととなると、個人的な関係と国家的関係をごちゃ混ぜにする」と指摘している。     

 一両日中にも濃厚になった大統領弾劾訴追の理由になった「ウクライナ疑惑」でも個人弁護士による非公式外交が大きな問題になっており、“裏外交”がトランプ政権の大きな特徴の1つであることがあらためて浮き彫りになりそう。

  
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