中東を読み解く

2019年12月10日

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 反政府運動が続くイラクの首都バグダッドで、デモ隊の拠点を武装組織が襲撃し、少なくとも25人が死亡、100人以上が負傷する事件が起きた。「襲撃はイランが仕組んだ」との非難が高まる中、反イラン派がデモ隊の護衛に駆け付けるなど、現場は騒然とした空気に包まれている。混迷深まるイラクはどこへ向かうのか。

治安部隊と対峙するバグダッド市民(AP/AFLO)

周到に計画された犯行

 襲撃は12月6日の夜8時ごろ、デモ隊の拠点「タハリール広場」に近いところで起こった。目撃者らの話として現地から伝えられるところによると、車数台に分乗して拠点に突っ込んだ武装グループが自動小銃を乱射、火炎瓶を投げつけたり、ナイフで襲ったりするなど無差別殺りくを実行した。

 死亡した中には、デモの参加者のほか、警備していた警察官や駆け付けた軍人も含まれ、10月初めにデモが始まって以来、最悪の事態となった。一連の衝突などでの死亡者は460人を超えた。現場は大河チグリス川にかかる橋のたもとで、デモ隊が近くのビルを反政府行動の本部としている。バグダッドでは5日にも、別の場所で武装集団がデモ隊を刃物で襲撃、13人が死亡する事件も発生していた。

 現地からの報道によると、今回の襲撃は最初、デモ隊が占拠している建物の1つである駐車場から始まったという。数日前から駐車場に、デモに参加するとして寝泊りしていた一団が突然銃撃を開始し、これに呼応するように車に分乗して武装集団が乗り込んできた。内と外から同時に襲う手口などから、周到に計画された犯行と見られている。

 今回の事態に対し、サレハ大統領は「ならず者の犯罪行為」と非難する声明を発表、イラク軍にデモ隊を守るため警備を強化するよう指示した。バグダッド駐在の英独仏3カ国の大使も民間人の安全を確保するよう大統領に要求した。

 デモ隊は政治改革や汚職の追放の訴えの他、イランによるイラク支配の終結を求め、次第に反イランの色彩を強めていた。

 事件の後、反イランの急先鋒で、議会最大派閥「行進者たち」を率いるシーア派指導者、ムクタダ・サドル師の民兵「マハディ旅団」がデモ隊の警備に駆け付け、道路に検問所を設置した。サドル師は早くからデモを支持してきたが、同派が警戒を強めるのには理由がある。

 このバグダッドの襲撃事件の数時間後、聖地ナジャフにあるサドル師の自宅が何者かのドローン攻撃を受けたからだ。攻撃は物損を与えただけで同師らに被害はなかった。しかし、襲撃事件とドローン攻撃は関係あると見られており、両事件には「イランが介在している」(デモ参加者)とする見方が出ている。

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