中東を読み解く

2019年11月22日

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 イスラエル史上初めてのやり直し総選挙を受け、組閣に取り組んでいたガンツ元軍参謀総長は11月20日、政権樹立ができなかったと発表、同国の政治的混迷が一段と深まった。ネタニヤフ首相もすでに組閣に失敗しており、国会が12月半ばまでに新たな首相候補を擁立できなければ、来年3月に再びやり直し選挙を実施しなければならない運びだ。

ネタニヤフ氏への抗議のポスターを司法省前で掲げるエルサレム市民(REUTERS/AFLO)

首相の「輪番制」で対立

 今回の混乱は4月に始まった。総選挙が実施された結果、ネタニヤフ首相率いる右派「リクード」勢力が連立政権樹立を目指したものの、ユダヤ教超正統派の兵役免除問題をめぐる対立が解けずに失敗、9月のやり直し選挙となった。そもそもイスラエルの総選挙では建国以来、単独で過半数(61議席)を獲得できた政党はなく、選挙のたびに連立工作が常態化してきた。

 9月のやり直し選挙では、ガンツ氏の中道政党「青と白」が33議席を獲得、32議席の「リクード」を上回った。しかし、連立工作では「リクード」が55議員の支持を受けたのに対し、「青と白」は54議員にとどまり、ネタニヤフ首相がリブリン大統領から組閣を命じられた。首相は「青と白」に大連立を呼び掛けたが、ガンツ氏から「起訴される可能性が濃厚な人物とは組めない」と拒否されて政権発足にこぎ着けることができなかった。

 このため今度はガンツ氏が連立工作を開始。同氏は2つのオプションを模索した。1つは「ネタニヤフ抜き」の「リクード」との大連立だった。だが、「リクード」はあくまでもネタニヤフ首相の下での連立を譲らなかった。代わりにリクードが持ち出したのが首相の「輪番制」だった。ガンツ氏と交代で首相を務めるという提案だが、ネタニヤフ氏は「最初の首相は自分」との立場をあくまでも主張した。

 というのも、首相は「便宜供与の見返りに自身に有利な報道をさせようとした」汚職容疑など3件の罪で起訴されることが確実視されており、イスラエルの一部報道機関は、早ければ11月22日にも起訴されるとの見通しを伝えている。同国の法律では、首相は起訴されてもその職に留まることができるが、他の閣僚ポストでは辞任せざるを得ない。このためネタニヤフ氏はどうしても首相である必要があるわけだ。

 首相としては、起訴された場合でも、首相職に踏みとどまり、「免責法案」を成立させて危機を脱したいとのシナリオを描いていると見られている。だが、ガンツ氏は選挙戦で、起訴されたネタニヤフ首相の下での政権参加はないと繰り返してきており、「輪番制」は受け入れ難い提案だった。

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