米メディアによると、米特殊部隊に追い詰められ、自爆して果てた過激派組織「イスラム国」(IS)の指導者アブバクル・バグダディの遺体はイスラムに則った葬儀が行われた後、海に水葬された。米軍は潜伏していた建物も爆撃で完全に破壊しており、死亡した場所や埋葬場所がISの聖地になることを防ぐための措置を急いだ。
潜伏していたのはアルカイダ司令官の家
バグダディは26日の米特殊部隊の急襲の際、軍用犬に追われてトンネルで自爆し、遺体はバラバラになった。部隊は遺体の一部をDNA検査による身元特定のため持ち帰り、バグダディと確認された後、遺体は水葬のため運ばれたようだ。水葬海域は明らかにされていない。
2011年に国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンが米特殊部隊によって殺害された後も、その遺体は水葬に付された。今回もビンラディンの前例に倣った措置であり、イスラム教の慣行に基づき丁重に埋葬したことをアピールすることで、報復を抑えたいとの配慮があると見られている。
ニューヨーク・タイムズによると、バグダディが潜伏し、死亡後に米空爆で完全に破壊された建物はシリアのアルカイダ系のテロ組織「フラス・アルディン」の司令官アブ・モハメド・サラマの家だったという。サラマ自身の生死は不明だが、この組織は主要なアルカイダ系組織「シリア解放委員会」(旧ヌスラ戦線)から昨年分かれた分派。米国は西側へのテロを画策している最凶組織として警戒していた。
ベイルートの情報筋はバグダディがアルカイダ系組織の家に保護を求めていたことについて、壊滅状態にあるISがアルカイダとの合流を図り、バグダディがその協議を行っていた疑いが濃厚になった、と指摘している。急襲作戦が行われた時、バグダディの11人の子供たちが保護されたが、これら子供たちの収容先は不明だ。
米特殊部隊の作戦は約2時間で終了したが、現場にいたIS戦闘員2人を捕虜とし、パソコンなど多数の証拠物件を押収しており、IS残党勢力の所在や海外の分派組織とのつながりなどを解明したい考え。作戦の任務を担った特殊部隊はデルタフォースの他、陸軍の第75レンジャー連隊が中心で、2人が負傷した。
バグダディの義理の兄弟の話として伝えられるところによると、バグダディは逃亡中、地下トンネルで潜伏生活を送ることが多かったが、そこには宗教家らしく、宗教関係の書籍などが用意されていた。また潜伏先の移動の際には「2台の白いトヨタのピックアップ・トラックが使われ、5人の配下と一緒に動いていた」という。