ナンバー・ツーも殺害、後継者は誰?
ISにとって大きな打撃になったのは、バグダディの側近で事実上のISナンバー・ツーだったアブ・ハッサン・ムハジールも26日、シリア北部のユーフラテス川に近い町ジャラブルスで米軍などの攻撃を受け死亡したことだ。ムハジールは公式のスポークスマンとして振舞っていた。
後継者と目されていたムハジールも殺害されたことで、誰がISを率いていくのかを予想することが難しくなった。アナリストらはバグダディが後継者を指名していたのは間違いないだろうと指摘している。ワシントン・ポストが米当局者の発言として報じるところによると、後継者としては6人の名前が取り沙汰されているという。
そのうちの1人はバグダディがかつて収容されていたイラクの米捕虜収容所「キャンプ・ブッカ」で一緒だったアルハジ・アブドラ・カルダシュというイラク人だ。また別の候補としては、サウジアラビア国籍のアブサレハ・ジャズラウイとされる。ジャズラウイは今年4月、バグダディの映像が公表された際、その傍らに映っていたとされる。
今回の作戦の内容が次第に判明するにつれ、極めてリスキーな“綱渡り”だったことが明らかになりつつある。その最大の理由はトランプ大統領が10月6日、バグダディ包囲網が絞られていることを知りながら、突然シリア駐留米部隊の撤退を表明し、10月末までの完全引き揚げを命じたからだ。
こうした作戦は実行するための支援部隊がなければなかなかうまくいかないが、国防総省は本来作戦の支援に欠かせない部隊を撤退させる一方で、過激派の拠点である北西部イドリブ県への急襲作戦を進めなければならなかった。作戦の実行部隊を運んだ8機のヘリは飛行経路の管轄権を持つロシアやシリア、トルコからの空域通過の了承を取り付けなければならず、「極めて危険度の高い余裕のない作戦」(米紙)になった。
問題はバグダディの死亡でISのテロ活動が今後、抑えられるかどうかだ。しかし、この20年間、米国はオサマ・ビンラディンをはじめ、過激派組織の指導者らを多数殺害してきたが、テロは一向になくなる気配はない。「ヘビの頭を切断しただけではテロ組織を壊滅することはできない。バグダディの死亡で過激思想は消滅しない」(アナリスト)。
米国は11月14日にワシントンで有志連合会議を開き、「ポスト・バグダディ」のテロとの戦いを話し合う予定だ。各国に部隊の派遣と資金の拠出を要求する構えと伝えられており、日本も新たな負担を求められるのは必至の状況だ。
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