2024年5月11日(土)

中東を読み解く

2019年11月22日

中東和平の見通しはさらに絶望的に

 イスラエルのスポンサーであるトランプ米政権は新政権が発足した後すぐに中東和平構想を発表する見通しだが、政権が樹立できないため延び延びになっている。和平構想を担当しているトランプ大統領の娘婿クシュナー上級顧問がすでに経済的な支援策を公表したが、肝心の政治的な内容は不明のままだ。

 だが、トランプ政権はこの18日、「イスラエルの占領地ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植活動を国際法違反と見なさない」と発表、従来の米政府の立場を大きく転換した。トランプ政権はこれまで、係争の聖地エルサレムをイスラエルの首都として認め、米大使館を同地に移転したが、今回の決定でイスラエル寄りの姿勢をあらためて鮮明にすることになった。

 しかし、こうした一連の決定により、パレスチナとイスラエルの中東和平の見通しはさらに絶望的になったのは明らかだ。西岸には120カ所の入植地に40万人、東エルサレム地域には20万人の計60万人の入植者がすでに存在しており、「国際法違反と見なさない」というトランプ政権の決定で、入植活動が加速するのは必至だ。

 ネタニヤフ首相はパレスチナ自治区のユダヤ人入植地の併合を明らかにしており、このままでは自治区に「パレスチナ独立国家」を樹立することは絶望的となるだろう。「パレスチナ独立国家」への一歩となった「オスロ合意」が有名無実化するのは確実だ。国連は入植活動が国際法違反であると発表したが、イスラエルもトランプ政権も聞く耳を持つ気はない。

 イスラエルは選挙のやり直しという政治的な袋小路に迷い込む一方で、パレスチナ自治区「ガザ」の過激派「イスラム聖戦」やハマスへの攻撃の手を緩めていない。12日の「イスラム聖戦」指導者の暗殺で始まった交戦はエジプトの仲介で停戦に合意したばかり。20日未明にはシリア・ダマスカス近郊のイラン革命防衛隊の拠点などを空爆した。イスラエル内外の混迷と緊張は収まる気配がない。

  
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