2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年12月27日

上院選挙で多数を獲る

 弾劾裁判を無期限に延長すれば、弾劾された大統領に無罪判決が出ない状態で、大統領選挙を迎えることになります。周知の通り、大統領選挙と同時に上院選も実施されます。今回の上院選では補欠選挙を含めると、100議席の内35議席が改選となります。その内訳は、共和党が23、民主党が12で、前者が不利な状況になっています。

 そこで、ペロシ下院議長には弾劾裁判を無期限に延長し、上院で4議席を上乗せすることによって、共和党から多数派を奪還して弾劾裁判の主導権を握るという思惑があるのかもしれません。民主党が多数派になれば、同党に有利な証言をする証人を召喚できます。ペロシ氏にとって、弾劾裁判の無期限延長はオプションの1つになっています。

 仮にペロシ氏が選挙前に弾劾条項を上院に送付し、トランプ大統領の無罪判決が出たとしても、民主党が上院選で多数派になれば、同党には再度トランプ弾劾の機会が回ってくる可能性があります。そう考えると、20年米上院議員選挙の結果は、極めて重要な意味を含んでいることが分かります。

トランプの同盟国軽視と私益優先

 ボルトン元大統領補佐官はニュースサイト「アクシオス」とのインタビューで、トランプ大統領の「北朝鮮が米国や同盟国を狙った核兵器を所有することは受容できない」という発言を取り上げ、「口先だけの政策」と述べて、厳しく批判しました。

 加えて、トランプ大統領が北朝鮮の短距離ミサイルを容認した点にも触れ、強い不快感を示しました。言うまでもなく、日本は北朝鮮の短距離ミサイルの脅威にさらされています。

 元側近のボルトン氏が、トランプ大統領が同盟国重視でないことを暴露したのです。確かに、ウクライナ疑惑においても、トランプ氏はロシアの脅威に直面しているウクライナへの軍事支援を保留し、同盟国軽視の行動をとりました。

 さらに、トランプ大統領は来年の大統領選挙でライバルになる可能性があるジョー・バイデン前副大統領と息子のハンター氏に関する調査をウクライナに要請し、国益よりも個人的利益を優先させました。一方、北朝鮮の核・ミサイル問題に関して、選挙を控えるトランプ大統領には、バラク・オバマ前大統領が成し得なかった金正恩朝鮮労働党委員長との個人的な関係の構築を成果として挙げ、民主党候補に対し優位な立場に立つという思惑があります。

 そもそもトランプ大統領が北朝鮮問題に目をつけたのは、オバマ前大統領に対する個人的感情があったとみることができます。一言で言えば、オバマ氏に対する嫌悪感が動機づけになっています。同氏が8年間で遂行できなかった北朝鮮問題に取り組み、成果を上げたいという強い欲求がトランプ大統領を動かしました。

 実はウクライナ疑惑と同様、トランプ大統領は北朝鮮問題も国益よりも私益のために行っているに過ぎないのです。ボルトン氏のような同盟国と国益重視の共和党保守本流は、トランプ大統領のウクライナ及び北朝鮮政策を心から受容できないことは明らかです。


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