海野素央の Love Trumps Hate

2019年11月14日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「なぜトランプはバイデンを引きずり降ろしたいのか?」です。ドナルド・トランプ米大統領は支持率が伸びないジョー・バイデン前副大統領(民主党)に対する攻撃の手を緩めません。トランプ大統領はバイデン氏の次男ハンター氏のウクライナ及び中国におけるビジネスを引き合いに出して、「腐敗している親子」というメッセージを有権者に発信しています。

 では、なぜトランプ氏は必至になってバイデン氏を引きずり降ろそうとしているのでしょうか。本稿ではその理由を説明します。

(Vitalii Abakumov/gettyimages)

バイデンにこだわるトランプ

 トランプ大統領は11月4日、南部ケンタッキー州ルイビルで支持者集会を開き、「ウクライナから見返りを求めたのはバイデンの方だ」と強調しました。バイデン氏はハンター氏の汚職捜査をしていたとされるウクライナの検事総長を解任しないと、軍事支援を行わないと語ったと言うのです。その上で、「これこそ本当の見返りだ」と語気を強めて語りました。南部ルイジアナ州モンローで同月6日に行われた集会においても、同様の主張をしています。

 トランプ大統領を応援する保守系の米FOXニュースの司会者ショーン・ハニティー氏は、同大統領の発言に呼応するかのように、バイデン前副大統領を「見返りのジョー」と呼んで揶揄しました。

 確かに、バイデン氏がウクライナ政府に軍事支援をちらつかせて、同国の検事総長解任を迫ったことを自慢げに語っている様子がビデオに映っています。ただ米メディアは、汚職の疑いのある検事総長解任が目的で、ハンター氏とは無関係であったと報じています。

 さて、ウクライナ疑惑に関する公開の公聴会が11月13日から米議会下院で始まります。トップバッターは、ウィリアム・テイラー駐ウクライナ代理大使です。米メディアによれば、テイラー代理大使は「ウクライナがバイデン親子に対する捜査を確約するまで、軍事支援は保留されると明確に理解していた」と語ったと報じています。

 トランプ大統領は公聴会に関してホワイトハウス記者団に、「ハンターが証言しなければならない」と語りました。ここからも、トランプ氏はバイデン前副大統領に対して相当なこだわりを持っていることが分かります。

強敵はウォーレンではなくバイデン

 民主党候補指名争いにおいてバイデン前副大統領とエリザベス・ウォーレン上院議員(東部マサチューセッツ州)が全国の支持率で1、2位を競っています。ところが州別の支持率をみると、トランプ大統領がウォーレン氏よりもバイデン氏を強く警戒している理由が明白になります。

 来年2月3日に開催される中西部アイオワ州での党員集会並びに同月11日の東部ニューハンプシャー州での最初の予備選挙で、ウォーレン氏が優位に立つかもしれません。しかし激戦州では、バイデン氏が勝利を収める可能性が高くなっています。

 最新の米ニューヨーク・タイムズ紙とシエナ・カレッジ(東部ニューヨーク州)による共同世論調査(2019年10月13-26日実施)によれば、中西部ウィスコンシン州でバイデン氏がウォーレン氏を14ポイントもリードしています。中西部ミシガン州では9ポイント、東部ペンシルべニア州では12ポイント、南部フロリダ州では8ポイント上回っています。

 では仮にバイデン氏とトランプ大統領が一騎打ちになった場合、上の4州でどのような戦いが予想されるのでしょうか。

 同共同世論調査によれば、バイデン氏がトランプ大統領をウィスコンシン州及びフロリダ州で2ポイント、ミシガン州並びにペンシルベニア州で1ポイントリードしており、大接戦になります。

 一方、ウォーレン氏が民主党候補に指名された場合、上の4州においてトランプ大統領が2ポイントから5ポイント引き離しています。ちなみに、ミシガン州におけるトランプ氏のウォーレン氏に対するリードは5ポイントです。

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