海野素央の Love Trumps Hate

2019年11月14日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

「3+1」で勝てる候補は誰か?

 一般に米大統領選挙では、「(中西部)オハイオ州を制する者が全米を制する」と言われいます。ただ、同州は共和党色が強くなっており、来年の大統領選挙ではむしろ「3+1(スリー・プラス・ワン)」の州が鍵を握るでしょう。

 以前説明しましたが、「3」はウィスコンシン州(選挙人10)、ミシガン州(16)及びペンシルべニア州(20)を指し、選挙人の合計は46になります。 2016年米大統領選挙でトランプ大統領はこれらの3州においてヒラリー・クリントン元国務長官に対し、わずか1ポイント以下で勝利でしました。それに対して、「1」はフロリダ州(29)で、トランプ氏の勝利は2ポイント以下でした。

 16年米大統領選挙においてトランプ大統領は選挙人306を獲得しています。選挙人270を獲得すれば、再選を果たすことができます。

 前回のこの獲得選挙人をベースに考えると、トランプ大統領は民主党から奪還したウィスコンシン州、ミシガン州及びペンシルべニア州の3州を落とすと、同大統領の獲得選挙人は260になり、再選が不可能になります。ただし、ウィスコンシン州とミシガン州を落としても、フロリダ州で勝利すれば選挙人をカバーできます。

 逆に民主党候補はウィスコンシン州、ミシガン州並びにペンシルぺニア州の3州を奪還すれば、トランプ大統領の再選を阻止できる公算が高まります。これらの州でトランプ氏に勝てる民主党候補はバイデン氏です。従って、トランプ大統領にはバイデン氏を引きづり降ろすことが不可欠になる訳です。

バイデンとウォーレンの「異文化連合軍」の相違

 トランプ大統領がバイデン氏を引きづり降ろしたいもう1つの理由を挙げてみましょう。

 バイデン氏はトランプ大統領の縄張りを荒そうとしているからです。それはどのような意味なのでしょうか。

 12年米大統領選挙においてオバマ前大統領は女性、若者、ヒスパニック系、アフリカ系、LGBT(性的少数派)から構成された「異文化連合軍」を形成して、再選を果たしました。それに対して、16年の選挙でクリントン氏は連合軍を組むことができませんでした。

 研究の一環として筆者は16年米大統領選挙においてクリントン陣営に入り、南部バージニア州フェアファックス市で左派のバーニー・サンダース上院議員(無所属・東部バーモント州)を支持する若者を対象に戸別訪問を行いました。彼らはヒラリー・クリントン氏が民主党大統領候補に指名されたので、投票に出向くことに消極的でした。

 筆者がサンダース支持のある白人男性の若者を戸別訪問したとき、彼は「トランプが大統領になって、最高裁が保守化したら困る」と懸念を示していましたが、クリントン選対にボランティアとして姿を見せませんでした。

 オバマ前大統領とは異なり、クリントン氏は異文化連合軍を組むことができませんでした。サンダース上院議員に若者の有権者を奪われてしまったからです。しかもアフリカ系及びヒスパニック系は、オバマ前大統領のときと比べて、クリントン氏に対する熱意が低かったことも事実です。

 では、今回の民主党指名争いにおいて支持率で首位を争っているバイデン前副大統領とウォーレン上院議員は、果たして異文化連合軍を形成できるのでしょうか。

 バイデン氏は、労働者及びアフリカ系にかなり依存した異文化連合軍でトランプ大統領に対抗するでしょう。ただ、バイデン氏は若者に人気がありません。クリントン氏と同じ轍の道を踏む可能性が高いといえます。

 一方、女性及び若者を中心に異文化連合軍を組むウォーレン上院議員は、アフリカ系の支持獲得が課題になっています。

 従って、バイデン・ウォーレン両氏の連合軍には穴があり、仮にどちらかが民主党の大統領候補になった場合、その穴を補う副大統領候補が必要になります。前回の大統領選挙では、クリントン氏は若者をエキサイティングにする副大統領候補を指名せず失敗しました。

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