海野素央の Love Trumps Hate

2019年11月1日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプのうそを暴く証言」です。ドナルド・トランプ米大統領は、ウクライナ政府に対してジョー・バイデン前副大統領と次男ハンター氏に関する調査を実施するように圧力をかけたとされる疑惑、いわゆる「ウクライナ疑惑」を巡る弾劾調査を「魔女狩り」「詐欺」及び「でっち上げ」とレッテルを貼って、「ロシア疑惑」と同様の戦略で危機を乗り切ろうとしています。

 しかしロシア疑惑とは異なり、ウクライナ疑惑では政府高官からトランプ大統領のうそを暴く証言が次々と飛び出しています。そこで本稿では、ウクライナ疑惑に関して証言を行った政府高官の陳述書を分析します。

(Sergio Lacueva/gettyimages)

外国政府を政治利用するトランプ

 トランプ大統領は「内部告発者は(ウクライナのゼレンスキー大統領との)通話記録を公表すると姿を消してしまった」「内部告発者よ。出てこい」と繰り返し呼びかけています。今回の疑惑の発端となった1人目の内部告発者の情報は「又聞き」であり、信頼性に欠けると主張しています。

 しかし、ウィリアム・テイラー駐ウクライナ代理大使が10月22日に米下院監視・政府改革委員会に提出した15ページにわたる陳述書を読むと、内部告発者の2次情報が正確であったことが分かります。

 テイラー代理大使のウクライナ疑惑に関する陳述書は、具体性に富み、しかも詳細な説明がなされており説得力があります。政府高官とのやり取りを時系列的にまとめている点も特徴です。

 加えて、再選の邪魔になるバイデン前副大統領を傷つける情報を得るために、ウクライナ政府に必ず調査をさせるというトランプ大統領の断固たる決意を、陳述書から読み取ることができます。ではテイラー代理大使の注目の証言をみていきましょう。

 まず、テイラー氏は「米国の政策作成における不正規で非公式なルートと、国内の政治的理由から不可欠な安全保障上の支援を保留したことで、米国とウクライナの関係が根本的に損ねられた」と証言しました。

 「不正規で非公式なルート」とはトランプ大統領の顧問弁護士ルディ・ジュリアニー氏及びゴードン・ソンドランド駐欧州連合(EU)大使等による政策ルートを指していることは明白です。ソンドランド氏はベテラン外交官のテイラー氏とは異なり、トランプ大統領に巨額の政治献金をして大使の地位を獲得した親トランプ派の1人です。

 「国内の政治的理由」並びに「安全保障上の支援の保留」は、トランプ大統領がバイデン親子並びに米民主党全国委員会(DNC)の調査を交換条件にして、ウクライナへの軍事支援を一旦凍結したことを意味しています。

 さらにテイラー代理大使は米行政予算管理局(OMB)の職員が7月18日、ウクライナへの軍事支援が保留になったと話しているのを聞いたと証言しました。しかし、この職員は保留理由を語らなかったというのです。

 テイラー代理大使はソンドランド駐欧州連合大使に9月9日、選挙協力の見返りに軍事支援を保留したことは「狂気じみている」と伝えたとも記述しています。一方、トランプ大統領は「交換条件の提示はなかった」と主張しています。テイラー氏の証言はトランプ氏のそれを根本から覆すものです。

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