チャイナ・ウォッチャーの視点

2019年12月27日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 3つ目は、台湾である。2019年6月1日に米国防総省が発表した「2019年インド太平洋戦略報告書」は、台湾について、米国が地域のパートナーシップを強化する4つの「民主主義体制の一つ」と位置付けた。続く7月8日、トランプ米政権は総額22億ドル(約2400億円)相当の武器装備品の台湾への売却を承認し、議会に通知した。さらに、同年8月20日、米国務省は、台湾にF-16V戦闘機66機を売却することを正式に議会に通知した。関連装備を含む売却総額は80億ドル(約8500億円)に上る。米台間の武器売却としては最大規模であるという。

 中国は、米国の台湾防衛に対する積極的関与の姿勢に危機感を強めている。中国の危機感の背景には、香港情勢を見て「一国二制度」に対する信頼を完全に失った台湾の人々が独立志向の蔡英文総統を支持し始めたこともある。2020年1月に予定されている台湾総統選挙では、蔡英文総統再選の可能性が高くなっているのだ。

米国空母へのトラウマ

 1996年の台湾総統選の際には、中国が台湾に軍事的圧力をかけるために大規模なミサイル発射試験を行い、これに対抗するために米国は2個空母戦闘群(当時。現在では空母打撃群と呼称している)を台湾近傍に展開して中国に圧力をかけた。この時、米国の圧倒的に強力な空母を前になす術の無い中国は一方的に引き下がるしかなかった。

 これは、現在でも中国のトラウマになっている。中国共産党は、二度と同様の屈辱を味わう訳にはいかない。もし、2020年1月の台湾総統選の際に、米国が再び空母を台湾近海に展開すれば、今度は、中国海軍の空母が北と南からこれを迎え撃つ態勢をとろうというのだ。

 中国は、2020年1月の台湾総統選に際して、再度、軍事的な圧力をかけるかもしれない。その時に米海軍空母が台湾に接近しても、これに対抗できる能力を示すために、中国は、この時期に何としても空母を南の三亜基地に配備したかったのではないかとも考えられるのだ。

 「山東」の就役は、周辺の安全保障環境が、米国の対中圧力によって急速に悪化していると認識する中国の危機感によるものだと考えられる。特に「山東」が、海南島の三亜基地に配備されたことは、今すぐに対応しなければならないと考える安全保障上の問題が、自国の南部で生じていると中国が認識していることを示唆している。

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