チャイナ・ウォッチャーの視点

2019年12月27日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 中国国防部が自ら言うとおり、「山東」は「遼寧」の改良型である。中国海軍は、「遼寧」の修復を通じて、同型空母の建造に係るノウハウを習得していったと考えられる。それでも、「遼寧」は修復当初から問題や不明な点が多く、001A型建造までに検証が必要だったのだろう。「山東」は、そのノウハウを用いて建造されている。

002型の正体

 これに対して、建造中の002型空母は「遼寧」とは全く異なる艦艇である。中国海軍が「遼寧」を修復した際にも、多くの困難な課題を克服しなければならなかった状況を考えると、002型空母にも設計段階から多くの問題が存在したと推測できる。

 こうした状況に鑑みれば、002型空母の建造には、設計の段階から遅れを生じている可能性がある。さらに、中国海軍4隻目の空母となる002型空母の2番艦の建造に遅れが生じていると報じられている。

 2018年11月、香港の英字メディアは、米中貿易摩擦の影響などで、中国海軍4隻目の空母の建造に遅れが生じていると報じた。報道は、米国との貿易摩擦のあおりで中国経済が減速し、習近平政権は「米国をこれ以上怒らせたくない」と考えているとしている。さらに、空母艦載機として配備されているJ-15戦闘機の飛行制御システムやエンジンに深刻な欠陥が見つかり、技術改良に膨大な予算が必要とされることも、計画延期の原因の一つになっているという。

5隻目以降は原子力空母

 上海で建造中の002型空母は、中国海軍5隻目以降の空母の検証のための艦艇であるとも言われる。中国海軍は、一貫して原子力空母の保有を目指しており、5隻目以降は原子力空母とする計画であるとされている。検証用の艦艇であるということは、002型空母の建造が、カタパルトなど新たに採用する技術の課題を洗い出し解決するという目的も持っているということである。「遼寧」の建造をもって、ある程度、課題を克服したと考えられる「山東」とは、建造速度に差があるのは仕方がないのかも知れない。

 いずれにしても、「山東」が南シナ海に突き出した形の海南島の基地に配備されたのは、中国海軍がすぐにでも南方に空母打撃群を展開したいと考えたからだろう。本来、北海艦隊に配属されるはずであった「山東」の母港を三亜基地に決定したのは、中国が002型空母の完成を待てなかったからだとも考えられる。

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