2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2019年12月27日

002型空母の就役は各種課題の克服にかかっている

海南島三亜基地での就役式に参加した習近平主席(Xinhua/AFLO)

 しかし、「山東」が将来にわたって南海艦隊に所属するのかどうかは、いまだ確定していないように見える。国防部の説明は、三亜基地を「就役式典の実施場所」という表現を用いており、南部戦区海軍(南海艦隊)に配属されたという表現を用いていない。中国は一時的にでも、この時期に、南シナ海および台湾における米国の圧力に対抗するため、空母を展開したかったのだとも考えられる。そうすると、「山東」は、将来、北海艦隊に配置替えされるかもしれない。

 もし、「山東」が北海艦隊に配備されるとしても、その時期は、002型空母の就役後になるだろう。推進装置に不具合がある可能性がある「遼寧」および「山東」は北海艦隊に配備されて西太平洋の限られた海域を行動し、002型空母が南海艦隊に配備されて南シナ海からインド洋、さらに地中海に至る広い海域を担当する可能性もある。

 ただし、002型空母の就役は各種課題の克服にかかっている。さらに、002型空母が就役したからと言って、中国の空母打撃群の構成が完成する訳ではない。中国は、将来的に原子力空母を運用したいと考えているからだ。002型空母は、その検証のために建造され、運用されるともいう。

 それでも、中国海軍が、北海艦隊と南海艦隊に空母打撃群を保有することになれば、台湾東側海域において米海軍空母打撃群の接近をけん制し、東南アジアから中東、ヨーロッパに至る地域に軍事プレゼンスを示すことができるようになる。空母は、パワープロジェクションの象徴的兵器である。中国の空母が海域に出現することによる政治的メッセージは強烈なものになる。

 米中ともに直接の軍事衝突を避けたいと考えている状況で、日本も中国の軍事プレゼンスに対抗できる政治的メッセージを発信できなければ、米中の対立にただ巻き込まれることになってしまうだろう。

  
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