2024年2月29日(木)

中東を読み解く

2020年1月2日

米国を紛争の当事者に引き込む?

 トランプ大統領は「イラクの人々がイランの支配から脱却する時だ」と呼び掛けているが、カタエブ・ヒズボラへの攻撃はかえって米国への反発と離反を加速しているように見える。政治家を含めイラク人のほとんどが米国への批判を強めているのが現実。仮に米国の主張するように、大使館襲撃の背後にイランがいるとしたら、米国はイランの思惑に乗せられたかもしれない。

 トランプ大統領が中東から米軍を撤退させたいと考えているのは皆が承知している。しかし、大統領選挙戦が本格化する中にあって、イランとの緊張が続く現状を放置して撤退を推進することは難しい。イランに対して弱腰、と見られるのは選挙にとってマイナス、なんとしても避けたいところだからだ。共和党の保守派や支持基盤は対イラン強硬派でもある。

 だが一方で、イランとの軍事的な衝突やイラクの紛争への関与も避けたいというのが本音。巻き込まれてしまえば、撤退という公約が果たせないどころか、米軍を戦地に大幅増強することになりかねない。大統領はこうしたジレンマを抱えて再選に臨んでいるわけだ。

 大統領にとって最も望ましい展開はイランが米国の経済制裁に屈服して米国の主張に沿った形で新たな核合意を結ぶことだが、イランはトランプ氏の足元をしっかり見ているだろう。対イラン制裁政策が再選を危うくさせかねない、と同氏に思わせるようにもっていくことがイランの狙いだと言える。

 「イランは自ら行動はせず、代理人にやらせるのが手口だ。イラクには5000人を超える米駐留軍がおり、駐留部隊への攻撃をカタエブ・ヒズボラなどの代理人に行わせれば、米軍が報復せざるを得なくなる。そうなれば、米国はイラクで紛争の当事者になってしまう。トランプ氏をこんな困難な立場に追い込めば、交渉を有利に運ぶことができると考えているのではないか」(アナリスト)。

 確かに、イラクが再び戦場となり、米国がその紛争の当事者になれば、トランプ氏の再選に赤信号が灯ってしまいかねない。フロリダのマール・ア・ラーゴの別荘で年末年始休暇を取り、ゴルフ三昧を楽しんでいる大統領だが、事態は予想以上に深刻かもしれない。

  
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