WEDGE REPORT

2019年12月19日

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 米下院本会議は18日、トランプ大統領のウクライナ疑惑について、「権力の乱用」と「議会妨害」があったとして、賛成多数で大統領を弾劾訴追した。表決は賛成反対が民主、共和両党でくっきり色分けされており、深刻化する政治の「対立と分断」を浮き彫りにした。弾劾訴追された大統領は史上3人目。上院では無罪になることが確実視されているが、トランプ氏も不名誉リストに名を連ねることになった。

(REUTERS/AFLO)

共和党が“トランプ党”に

 下院本会議は両党の議員がそれぞれ賛成、反対の立場から議場で演説した後、採決に移った。トランプ氏の弾劾訴追の理由は、個人的な政治利益のため国家安全保障を無視して「大統領権限を乱用」したこと、下院調査に応じないよう政府職員らに指示して「議会妨害」したことの2点だ。訴追決議案はトランプ氏が大統領にとどまれば、憲法への脅威であり、弾劾・罷免に当たるとしている。

 採決はまず、「権力乱用」から行われ、賛成230、反対197の賛成多数で可決された。次いで、「議会妨害」の採決に移り、賛成229反対198で可決、弾劾が決まった。注目された造反議員について、民主党からは「権力乱用」で2人、「議会妨害」で3人が弾劾に反対票を投じた。

 共和党からは両条項とも弾劾賛成の造反議員はいなかったが、「議会妨害」については2人が棄権した。共和党がこうした強い結束を示したことについて米CNNは「共和党は“トランプ党”になった」とコメントした。

 弾劾訴追は1868年の17代アンドルー・ジョンソン大統領、1998年の42代クリントン大統領に続いて3人目。ウォーターゲート事件で追及されたニクソン大統領は下院司法委員会が弾劾条項を可決した後、本会議やその後の上院の裁判でも有罪になることが必至の情勢となったため、下院本会議の投票を待たずに辞任した。トランプ氏はこうした弾劾史に名を残すこととなった。

 トランプ大統領は弾劾に先立ってペロシ下院議長に書簡を送り、「弾劾はクーデターの試み」「ひどいでっち上げ」「民主主義への攻撃だ」などと強く非難、トランプ節を炸裂させていた。大統領は18日もミシガン州での遊説を予定しており、民主党を激しく攻撃すると見られている。

 投票が真っ二つに割れたように、世論も弾劾賛成、反対で同様に大きく分断している。弾劾直前の17日のワシントン・ポストが公表した世論調査によると、弾劾賛成は49%、反対が46%。別の調査でも、賛成47%、反対48%と割れており、弾劾後の世論の動向が注目される。

上院の有罪には20人の造反が必要

 上院の弾劾裁判は最高裁長官が裁判官となり、上院議員(100人)は陪審員となる。選ばれた下院議員が検察官としての役割を担う。検察官役の下院議員はペロシ下院議長が任命する。上院での弾劾は、出席した上院議員の3分の2の賛成で可決されれば、有罪となり大統領は罷免されることとなる。

 現有議席は共和党が53、民主党47(民主党系無所属含む)。従って100人全員が出席するとすれば、その3分の2は67議席。共和党から20人の造反者が出れば、大統領弾劾が決定するが、現状では共和党からこのような大量の造反者が出る可能性は極めて低い。

 ワシントン・ポストによると、共和党の上院議員でトランプ大統領のウクライナ政策に対し、懸念を示したのは14人いるが、一貫して大統領を批判しているのは元共和党大統領候補のミット・ロムニー議員(ユタ州選出)、スーザン・コリンズ議員(メイン州選出)、リサ・マカウスキ議員(アラスカ州選出)の3人しかおらず、この3人も弾劾には反対すると見られている。むしろ、民主党議員から弾劾反対の造反者が出る可能性が強いようだ。

 憲法では、上院の弾劾裁判については詳しくは規定していない。例えば、証人を呼ぶことができるのか、どのような証拠を採用するのかなどは上院議員の決定にかかっている。クリントン大統領の場合は、証人は呼ばれず、新しい証拠も認められなかった。録音された証言だけが採用された。

 この証人を呼ぶかどうかについては現在、共和党のマコネル、民主党のシューマー両院内総務が激しく対立しており、1月と見られている弾劾裁判の日程はこの話し合いの行方にかかっている。

 シューマー議員がトランプ大統領に近いマルバニー大統領首席補佐官代行やボルトン前補佐官(国家安全保障担当)の証人喚問を要求しているのに対し、マコネル議員が証人は必要ないとして反対しているという。もし、証人喚問が実現すれば、陪審員役の上院議員が書面で質問を出し、最高裁長官が読み上げる形となる。

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