世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年12月12日

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 11月18日、ポンペオ米国務長官は、40年来の米国の政策を変更、トランプ政権はイスラエルによる西岸への入植を非合法とは考えない旨発表した。ポンペオは発表の中で、「オバマ政権の入植地問題へのアプローチを転換する」「入植地それ自体は国際法に不整合なものではない」「第一に法的問題は個々の事例により決まる」「第二に西岸の最終的地位はイスラエルとパレスチナが交渉すべきものだ」「第三に今回の決定は世界の他の地域での事例に関する法的問題に影響を与えるものではない」「紛争を法的に解決することは出来ず、それはイスラエルとパレスチナの交渉によってのみ解決される政治問題だ。米国は引き続き和平交渉を支援する」等と述べた。

art-sonik/bluebearry/iStock / Getty Images Plus

 今回の米国の決定は、国際法、国連決議、国際社会が取ってきた立場に違背すると言ってよい。11月20日には、この問題で安保理が会合した。安保理として入植反対の声明を出すことはできなかったが、多くの理事国が米非難の発言をしたという。米国の決定の背景には、⑴汚職問題や組閣で苦境に立つネタニヤフ政権へのテコ入れ、⑵米大統領選を控えた米国内政治上の配慮があったのであろう。

 今回の発表は、米国が中東和平において「二国家解決」方式(パレスチナ国家を造る)ではなく、イスラエルのネタニヤフ現政権が主張する「一国家解決」方式(イスラエルがパレスチナを包含する)への支持を表明したことに等しい。しかし、一国家解決はうまく行かない。まず、米国は中東和平の仲介能力を失うだろう。

 1967年の「第三次中東戦争」以後、とりわけ1990年代初めのマドリッド会議以後、国際社会は一貫して「二国家解決」を推進してきた。この考えに沿う解決方法以外に現実的な解決はないと思われる。一国家解決をすればイスラエルはアパルトヘイト国家(パレスチナ人隔離・差別国家)にならざるを得ず、イスラエルという国は解決できない紛争を内包することになる。イスラエルのユダヤ国家性も一層問題となるだろう。イスラエル国内は暴力化し、解決困難になる。一国家解決論の主張は良く理解できない。

 イスラエル人の間にも今回の米国の決定を懸念する声があるという。また、入植者が和平の障害になっていることを侮蔑する人々も多くいるらしい。ワシントン・ポスト紙のコラムニストDavid Ignatiusは11月19日付け同紙論説‘America is now implicitly endorsing a one-state solution’で、「生のリアルポリティークでもうまく行かないが、憤慨とノスタルジアだけでも良い政策は生まれない」と言い、結局、中東和平は二国家解決に戻って来ざるを得ないだろうと示唆する。全くその通りだと思われる。最低限言えることは、トランプ政権が続く限り、中東和平は動かなくなったということではないだろうか。その間、現地の暴力が激化しないことが望まれる。

  
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