中東を読み解く

2020年1月4日

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イラクは米軍撤退を要求か

 出方が注目されるイランは3日、最高指導者ハメネイ師の出席の下で最高安全保障委員会を開催し、対応を協議した。会議後の声明は「犯罪者には厳しい報復が待っている。適切な時期と場所で実行される」とし、「米国最大の戦略的な過ち」と非難した。しかし、具体的な対応については触れなかった。

 各地でも反米機運が高まっている。レバノンのシーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師はイラクのシーア派教徒に対し、ソレイマニ司令官の死を無駄にせず、立ち上がるよう求めた。イランの支援を受けているとされるイエメンのフーシ派も米国を強く非難した。在イラク米大使館は米市民に対し、早急にイラクから国外退去するよう勧告を出した。

 だが、米国にとって具体的な反応はイラク議会からもたらされそうだ。イラク議会は4日緊急招集され、ソレイマニ司令官の抹殺問題を協議する見通し。アブドルマハディ首相はソレイマニ司令官と一緒に、イラク人が殺害されたことを「深刻な国家の主権侵害」と非難している。

 現地からの報道などによると、イラク議会は米軍の撤退を要求する構えで、トランプ政権は重大な決断を迫られることになるだろう。中東からの米軍撤退を掲げるトランプ大統領にとっては“渡りに船”のような面があるが、長期的に見れば、約5200人のイラク駐留軍が撤退することは米国益にとって大きな損失になるのは間違いない。

 トランプ大統領は、いったんはシリア駐留軍の撤退を公表したが、現在はシリアの石油を過激派組織「イスラム国」(IS)に入手させないようにするためとして、約700人を残留させている。シリア駐留軍が小規模の部隊で済んでいるのは、有事の際にはイラクからシリアに駆け付けることができるという選択肢があるからだ。

 イラク駐留軍はテロとの戦いだけではなく、イランのイラクに対する影響力を阻止するためにも必要だろう。駐留軍が消えれば、イランは今以上にイラクで自由に振る舞うかもしれない。ソレイマニ司令官の抹殺は米中東政策の根幹を大きく揺るがせている。

  
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