2022年8月8日(月)

WEDGE REPORT

2020年1月14日

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小山 堅 (こやま・けん)

日本エネルギー経済研究所 常務理事・首席研究員

1986年早大大学院経済学研究科修士、エネルギー経済研究所入所。英国ダンディー大学博士課程修了(PhD取得)。2020年より専務理事。研究分野は国際石油・エネルギー情勢、エネルギー安全保障問題。

2020年油価は平均65ドル+5ドル

 こうした市場の地合いの下で、今回の出来事は、市場関係者に地政学リスク、中東情勢の不安定さとその影響を改めて意識させる結果をもたらしたといえる。今後の市場展開においては、中東情勢や地政学リスクが「材料」になる可能性を踏まえていく必要がある。

 確かに、ここまでの展開では、全面衝突を回避したい米国・イラン双方の思惑もあって、戦争など最悪のシナリオは実現しない状況となっている。しかし、両国の激しい対立構造は全く不変のまま残存している。米国への激しい非難を続け、中東からの米軍撤退を求める声を発したイランや中東の親イラン勢力が、今後、どのような動き・展開を示していくのか、注目していく必要がある。

 また、今回、時をほぼ同じくして発生したウクライナ航空機の墜落事件について、当初は事故としていたイラン側が、欧米等からの指摘も受けて、イラン軍の誤射による撃墜を認めたこともあって、イラン国民から厳しい体制批判が生じている。さらに、こうしたイラン国内の体制批判の動きを米国が応援するメッセージを発するなど、両国関係の観点から注目される動きもある。また、イラク国内の米軍基地へのロケット攻撃が再び起こり、米国人の負傷者が発生するなど、不穏な動きも見られている。まさに、情勢は緊迫したままであり、今後の事態の推移と展開から目が離せない。

 ひとたび、地政学リスクと石油供給への影響に関する懸念が、「材料」として意識された以上、市場関係者がその動きに注目を払い続ける可能性は高い。その時点における国際石油市場の需給環境や世界経済と金融市場の動向にもよるが、今の状況をそのまま前提とすれば、地政学リスクの深刻化は原油価格の変動水準を切り上げていく力を働かせよう。その切り上げの度合いは、リスクと石油供給への脅威の度合いに比例する。

 弊所は、昨年末に2020年のブレント原油は平均65ドルを中心とした水準になるとの見通しを発表した。これは、地政学リスクなどの「攪乱要因」の存在を前提としていないものである。今の時点でのリスク感が残存する限り、変動水準が5ドル程度切りあがっても不思議はない。さらに、中東情勢の状況次第では、さらなる高価格ケースも念頭に置いておく必要がある。原油供給の9割を中東からの輸入に依存するわが国にとっては、今後の最新情勢に応じた、市場分析の精緻化・深掘りと、エネルギー安定供給対策の検討、そして中東の安定化に向けた外交や経済協力などの戦略的取り組みが必要である。

  
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