2024年11月22日(金)

五輪を彩るテクノロジー

2020年1月16日

一枚布で萎めたり緩めたり

 選手によって筋力や泳法が違うことから、動きやすさの確保と水中で足のポジションをサポートする2種類のタイプを作成した。

瀬戸選手(中央)はじめトップ選手がそれぞれの筋力や泳法に合った水着で東京五輪を目指す(2019年10月、『アリーナ』トップモデルスイムウエア発表会で)

 動きやすさを追求した結果生まれたのが、ほとんど例を見ない一枚布の水着だ。それまで多いものだと10パーツや20パーツと布を貼り合わせるのが一般的で、1パーツ、つまり一枚の布で作るというのは一つのテクノロジーだ。「布を貼り合わせることで部位ごとに萎(しぼ)めたり緩めたりできるが、接合部には突っ張り感が出て水着が重くなる。一枚では物理的に難しかった部位ごとに萎めたり緩めたりできるパターン開発に成功した」(吉永氏)

 実際に着用した瀬戸選手は「これまでとは動きやすさが違う。個人メドレーでは4泳法をやるので、この特性はストレスの軽減になる」と話す。

 もう一つのサポート強化モデルでは、水着の内側にテープを配し、濡(ぬ)れた時にグリップ力が増して水着と肌との摩擦力を高めてズレを軽減させた。水着と肌がズレてしまうと、水着の持つ機能を100%身体に伝えることができない。それを改善した。もはや水着は体の一部と同化した皮膚感覚だ。

 女子用水着では、ワコールとの共同開発で一石を投じる。〝胸をいかに美しく大きく見せるか〟に取り組むワコールに、〝胸の膨らみをいかに潰すか〟を考えてもらったのだ。これも〝水の抵抗との戦い〟の一つである。胸のふくらみ部分は少なからず水の抵抗に遭うからだ。

「〝合理的に潰して逃がす〟という発想に転換し、胸裏地の下部は布帛素材で抑えて胸の肉を持ち上げ、上部は伸縮性があるニット素材で肉を脇に逃がした」(吉永氏)

 これまでは半ば強引に潰し、選手は圧迫感を感じていたというが、力業から合理的なやり方にし、女子選手にも動きやすさを与えた。

 レーザーレーサーが台頭して10年がたち、「動きやすさ」を目指した技術開発も進化している。

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◆Wedge2020年1月号より

 

 

 

 

 

 

 

 


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