これが事実だとすれば、薄氏自身が殺人や傷害致死などの罪に問われることになろう。また、巨額資産が薄氏や谷容疑者の収賄や横領など不正な蓄財によるものだと認定されれば2人の罪状は極めて重くなる。
大型汚職事件に絡む政治局員の失脚例としては、1995年の陳希同・元北京市党委書記と、2006年の陳良宇・元上海市党委書記がある。陳希同・元書記は1998年に収賄罪などで懲役16年、陳良宇・元書記は2008年に同罪などで懲役18年の判決を受けた。
中国の量刑は「見せしめ」
覚せい剤犯罪で日本人が処刑されたのをみても分かるように中国の量刑は「見せしめ」のため、とても厳しい。薄夫妻について、殺人罪に加え、巨額収賄が認定されれば、死刑判決(執行猶予付きを含む)もありうるだろう。
外国人が被害者でもあり、中国指導部は事件の全容を解明し、速やかに内外に公表するべきだ。これとは別に、薄氏が重慶市を「独立王国」とし左派路線を推進したことについての政治的な総括もきちんとなされなければならない。
薄夫妻のスキャンダルは奇しくも、中国が抱える党指導者ら特権階級の腐敗と横暴、貧富の格差という社会問題の深刻さを浮き彫りにした。こうした問題を解決するには、本格的な政治体制改革を推進するしかない。政治体制改革を訴え、孤軍奮闘を続ける温首相の有言実行を期待したい。
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