Wedge REPORT

2020年2月6日

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木下斉 (きのした ひとし)

一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事

1982年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。経営を軸に置いた中心市街地活性化が専門。内閣官房地域活性化伝道師等も務める。近書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK出版新書)。

DMOのパフォーマンスを
チェックする米ナパ・バレー

 今こそ、日本版DMOの基になった米国の事例から、形ではなく、本質を学ぶべきである。まず、成功事例としては、ナパ・バレーの取り組みがあまりにも有名だ。ナパ・バレーはカリフォルニア州の中西部に位置し、今ではワイン生産地として世界的に知られている。同地域は、ワイナリーリゾート事業に早期から取り組み、単にワイン生産地としてだけではなく、観光目的に訪れて滞在してもらうことを狙って開発された。

 米国では特別区を作り新たな負担を皆で行い、それに対応してサービスを拡大するという負担者受益のモデルが多数存在している。その一つとして、ナパ・バレー地区ではTID(Tourism Improvement District)という特別区制度を設け、この特別区内の観光客に部屋代の2%の負担金を課金している。これは自治体が徴収を代行し、このうち75%はDMO予算となり、残り25%は自治体収入となる。

 ここで重要なのは、負担金は地元の宿泊施設事業者からすればネガティブな要素でもあるため、この資金を活用するDMOが高いパフォーマンスを生み出しているか、各事業者が厳しくチェックする仕組みがあることだ。DMOは各事業者に活動成果を説明するために、地域における訪問客数、訪問客による消費額、訪問客の属性・行動パターンなどのデータを整理し、事業評価レポートを細かく発表している。

 なお、ナパ・バレー自体がワイナリー集積地として世界的に有名になるために、農業政策でも優れた減税策を講じてブランディングを推進し、その上でワイナリーリゾート事業へと進んだ経緯がある。つまり、制度や財源以前として、DMOが事業競争力を持つような地域づくりを戦略的に長年行ってきたからこそ今日の繁栄がある。

 一方、同州にはDMOの失敗事例もある。18年にサンタクララ市が地元DMO「ビジット・サンタクララ」への予算支出を行わない決定をし、同DMOはすぐに活動休止に追い込まれた。一般会計からコンベンションセンターの管理業務などをDMOに発注していたが、その運営や会計に不透明な点が多数見られたことが原因だ。つまり単に財源を行政の一般会計から優先的にDMOに支払うことは組織を腐敗させ、成果を生み出さないことになる。

 こうした海外の事例から日本版DMOが学べることは4つある。1つ目は、端から税財源に依存するのではなく自主財源を稼ぎ出すだけの事業を持つこと。2つ目はその事業規模に応じた組織規模にすること。3つ目はDMOが外部からの財政的支援を得るのであれば、その運営について透明化しガバナンスを担保すること。4つ目は外部からの税財源を用いているならば、DMOの活動が広く市民の福祉につながっているかを評価、測定することである。

 これらの整理がないままに、肥大化する組織を前提にして、不足財源は行政や民間事業者頼みといった本末転倒な話で物事を進めては、早晩、加盟組織や市民からの理解を得られなくなるだろう。

 観光客の数ばかりを追い求め、DMOの設立数をKPIとして定めるような地方創生政策は、地方をいずれ不幸にする。その転換が求められる。

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■幻想の地方創生  東京一極集中は止まらない
Part 1  地方創生の”厳しい現実” 「破れたバケツ」状態の人口流出を防げ
Part 2      人口争奪戦で疲弊する自治体 ゼロサムゲームでは意味がない
Interview 地方創生の生みの親が語る、第二期へ向けた課題 増田寛也氏
Part 3    「観光で地方創生」の裏で乱立する「予算依存型DMO」
Part 4      全ての自治体は自立できない 広域連携を促す交付税改革を
Column    農村から都市に移る国政の関心 地方の”自律”に向けた選挙制度とは?

  
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◆Wedge2020年2月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 

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