政府は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、「観光による地方創生を実現する必要がある」とした。それに向けて同戦略ではDMO(Destination Management/Marketing Organization)を核とする方針を初めて打ち出した。
DMOとは観光庁が観光産業振興を目的に認定する法人のことを指す。もともと欧米では、DMOやDMC(Destination Management Company)などの組織が存在しており、コンベンションの誘致などを通じて地域の宿泊業などの稼ぎを作り出している。それらを真似て日本でも従来の観光協会のような業界団体ではない、官民を挙げた組織を作り出すべきだという議論の末に日本版DMO認定制度が成立した。19年8月7日時点で136法人がDMOとして登録され、さらに候補は116法人に上る。
政府は地方創生推進交付金として1000億円規模の予算を計上しているが、日本版DMOもその支援対象メニューに含まれ、地方創生において重要な位置づけとなっている。その結果、全国各地でDMOが設立されてきた。
しかし、そのDMOの運営において「財源」と「人材」に関連する問題が指摘され続けている。そもそも欧米のDMOでは独自の財源を持って運営を行っていることが多い。日本版DMOの多くも、計画案の段階では補助金だけではなく、独自予約サイトやマーケティングレポート販売、特産品販売などといった自主財源のミックス型を志向していた。
しかし、観光庁が開いた「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」において次のような指摘が相次いだ。財源面では「多くのDMOでは安定的かつ多様な財源の確保の点で課題を抱えている。特に受益者負担の視点を踏まえた特定財源の確保の取り組みの例は少数にとどまっている」、人材面では「自治体や広告代理店、地元事業者などからの出向者が中心となっている組織では、専門的なスキルや人脈の継承が困難であり、組織としての専門性の維持、向上に課題を抱えている」などがその代表だ。
加えて地方の現場では「早く設立しなければ補助金や交付金をもらうことができない」という声も多く聞かれる。
財源の課題に対し、入湯税・観光税などの観光に関連する自治体税収を固定的なDMO財源にするような動きも一部地域でみられる。そして、そもそもDMOは稼ぐ組織ではない、といった発言も耳にする。