世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年2月5日

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 ポンペオ国務長官とエスパー国防長官がウォールストリート・ジャーナル紙に1月16日付けで‘South Korea Is an Ally, Not a Dependent: Seoul can and should contribute more to its own national defense’と題する共同記事を寄稿、韓国は同盟国であり、扶養国家ではない、在韓米軍経費負担増大など防衛貢献をもっと拡大すべきだ、と求めている。

Baris-Ozer/ iStock / Getty Images Plus

 目下交渉中の事項につき国務・国防両長官が連名で寄稿するのは異例である(17年8月北朝鮮に関するティラーソン・マティス連名の寄稿事例はあるが)。韓国の防衛費増大を「感謝」する、米韓は「対等なパートナー」などと言葉には注意しつつ、メッセージ自体は厳しいものを突き付けている。この記事は「防衛費用の負担拡大を韓国が引き受ければ、米韓同盟は今後も朝鮮半島や北東アジア、そして世界の平和と繁栄の要であり続けるだろう」と述べて終わるが、裏返せば、韓国が防衛負担の拡大を引き受けなければ米韓同盟は地域の「要」であり続けることはできないことを示唆しているとも言える。米側は暗に在韓米軍撤収もちらつかせながら交渉しているとの見方もある。トランプはかつて、そういう趣旨のことを述べたことがある。

 9月から行われている米韓交渉は難航している。昨年締結した10次協定は米の主張で有効期間1年となり(それまでの協定は有効期間5年)、昨年末に既に満了した。新協定は間に合わなかった。1月14、15日ワシントンで6回目の交渉を行ったが不調に終わった。今後、更に交渉が行われる予定である。米側は従来の負担額の5倍の負担(約50億ドル。昨年協定では韓国負担は8.2%増の約9.24憶ドル)を求めている。しかし、最近は要求額を低めたとも伝えられている。また、韓国は従来通り韓国人従業員の人件費、軍事建設、軍需支援項目という枠内で検討するとの原則を維持しているのに対して、米国は新しい負担項目の追加(朝鮮半島周辺の戦略・偵察機訓練費用等)による増額を主張しているという。なお韓国負担の5倍要求については、米国内でも不適当な同盟国政策だとのトランプ政権批判がある。米国の強い決意の裏には、トランプの大統領選挙対策があるのであろう。トランプの同盟政策は、華々しいレトリックとは裏腹に誇れる成果は上がっていない。

 この共同記事が出されるに至った背後には、次のような対韓不信もあると思われる。

(1)日韓GSOMIAをめぐる韓国のミスハンドリング。

(2)ミサイル防衛システムTHAADの韓国配備。韓国は対中配慮のため正式配備につき未だ明確な態度を決めていない(今は「暫定」配備)。その間に中国は今なお対韓圧力を強めている。

(3)対北朝鮮政策の相違。文在寅政権は南北協力を優先、制裁解除(例外)を求めており、この姿勢は今年に入って一層強くなっている。特に文在寅は新年記者会見で個人の北朝鮮観光を制裁とは関係がなく、「南北問題は我々の問題」だとして押し切る姿勢を見せている。これに対しハリス駐韓大使は「米韓で協議すべきもの」と釘を刺した。当然のことである。これに青瓦台関係者が「不適切な発言」だと批判、最近韓国内のハリス批判が強まっている。全くおかしなことである。同大使が日系米国人であることなども韓国でとやかく言われている。

(4)南シナ海問題(中国の海洋進出)。韓国は従来から中国に配慮、明確な立場の表明を回避してきた。最近漸く「新南方政策」と称する対応を見せているが、米国は依然として疑念を持っているだろう。

(5)中東への艦船派遣。韓国はイランに配慮、態度を決めなかった(イランと米の間に挟み込まれた形になっていた)。1月14日の米韓外相会談でポンペオは改めて派遣を要請、それから1週間後の21日、韓国は派遣を決定した。イランは韓国側に懸念を表明していたことが分かっている。

 この共同寄稿記事は、韓国の主要報道を見る限り何故か十分には報道されていないようだ。むしろ、日本メディアの方が広く報道している。現行の日米協定は21年3月末に終了する。日本もそれまでに新協定を纏めねばならない。その意味で、米韓交渉の行方は日本の関心事でもある。

  
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