Wedge REPORT

2020年2月14日

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永井隆 ((ながい・たかし))

ジャーナリスト

1958年群馬県桐生市生まれ。明治大学卒業後、東京タイムズ記者を経て、1992年にジャーナリストとして独立。雑誌や新聞、ウェブで精力的に執筆する。著書に『移民解禁 受け入れ成功企業に学ぶ 外国人材活用の鉄則』『EVウォーズ』『アサヒビール30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など。

流行り廃りの波の中でどう生き抜くのか

「酒のトレンドは10年から15年のスパンで変化します」と木内。日本酒、ワイン、ビール、缶チューハイなどRTD(レディ・ツゥ・ドリンク=蓋を開けてすぐに飲める飲料)、甲類焼酎、そしてクラフトビールと、”流行・廃りの波”が寄せては引いてを一定期間で繰り返す、というわけだ。このなかでも、「世界的に見て、右肩上がりを続けているのがウイスキー。波がありません。ビールは製造後、2カ月以内に消費されなければならないが、ウイスキーなら長期保存できるメリットも大きい。先を見越しながら、次につながる事業を展開していきたい」と木内は語る。

  日本酒、クラフトビール、外食、蒸溜酒と、事業領域の幅は広がっている。19年6月期の売上高は約23億円。このうちローカルをメインテーマとしたクラフトビール事業がいまは中心であるのは間違いない。

 そのクラフトビールについては、前回の地ビールブーム終焉から既に15年以上が経過した。「大手のキリンが2015年に参入したことで、クラフトビールはいまでも勢いを保っている」(クラフトビールメーカー)といった指摘はある。とはいえ、参入が16年の約200社に対し今は400社を超え、市場の伸びを参入のペースが上回っている傾向は強くなってきた。地ビールの時と同様に”美味しくないビール“が登場してしまうと、「クラフトビールの人気は衰えていく懸念はある。高品位のビールをみんなで造り続けるのは、(市場が安定的に伸びる)前提です」(磯崎功典キリンホールディングス社長)と話す。

 クラフトビールがこのまま伸び続け、学校給食の影響を受けた日本の食文化そのものを破壊していけるなら、理想だろう。“コト消費”がさらに増加していき、「人とは違う特別なもの」へのニーズが高まる可能性もあろう。しかし、現実はそう楽観的ではない。東京オリンピック後に、景気後退の局面を迎えたとき、高額なクラフトビールが国内市場で今以上に伸びていけるのか、不確定要素は多い。

 クラフトビールの人気が仮に落ちても、10年から15年で再び“波”は戻ってくる、とも予想できる。ただし、この間を何かで埋めなければならない。

 自称「俺は、中小企業のおやじ」の鈴木修スズキ会長は、「中小企業は変化に対応するスピードが大切」と筆者に話したことがある。失敗も多いが、インド進出の一方、アメリカ撤退や中国撤退と素早く決断して好結果を導いてきた。

 木内酒造の場合も、海外展開や多角化の一方で、限られた経営資源をどう配分していくのか。市場の変化に対応したスピード感のあるクールな決断と細かなバランスが求められる。

  
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