「グローバルに展開するからこそ、ローカルを大切にするのです」
木内酒造(茨城県那珂市)の木内敏之副社長は話す。フクロウのロゴがついた「常陸野ネストビール」を展開する同社は、1999年と早い段階から輸出をしている。
輸出はニューヨークなどのアメリカから始まり、欧州やアジア、オーストラリアなど今は45の国と地域に及ぶ。
常陸野ネストビールの特徴は、原材料に地元の茨城産や日本産の食材をできる限り使っている点だ。流行りやトレンドに合わせるのではなく、自分たちの持っているもの、すなわちローカルを基幹として打ち出している。海外市場に対してもだ。
創業は1823年。良質な水が湧き、日本酒造りから歴史は始まった。クラフトビールに参入したのは96年。同じくこの水をビール造りにも利用しているが、それだけではない。参入当時には日本のビール麦「金子ゴールデン」を地元の農家とともに復活させた上、北海道で育種されたホップ「ソラチエース」と、日本産の原料にこだわった「ニッポニア」を開発したほど、日本や茨城といったローカルへのこだわりだった。
クラフトビールの生産量は、当初年間400キロリットルだったが、現在は年2300キロリットルに拡大している。数量ベースで「海外が4割、国内6割の構成」(木内)だ。
前回の「キリンビール後編」でも触れたが、400社を超えるクラフトビールメーカーのうち、年間1000キロリットル以上を生産するのは数社しかない。生産量を明かしていないメーカーは一部あるが、同社は400社の中でトップクラスに位置しているのは間違いない。
グローバル化が進むほどに、実はローカルは重要になる。アイデンティティーが求められるからだ。企業でも個人でも、同じである。その会社(その人)が何者なのかを明確にしなければ、国際社会の中では認めてはもらえない。
出身地域や企業の歴史(個人の場合なら家系)、会社がもつ理念(同じく家訓)などが、アイデンティティーを形成していく。