オトナの教養 週末の一冊

2020年2月14日

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ダウェー計画

 記者が松島さんに初めて出会ったのも、タイのバンコクだった。2013年のことだ。ちょうど「ミャンマー(進出)ブーム」が最盛期の頃で、「日本の役人のくせに〝山師〟のような男がいる」と、噂に聞いてアポイントをとった。

 開口一番、「ダウェーは日本の生命線になります。一貫製鉄の高炉がない東南アジアに日本の企業が進出して高炉を作ればいい」と、話してくれたのを今で思い出す。しかも、この道を最初に通したのは旧日本軍だという。

 ダウェーは、ミャンマー南部のアンダマン海に面した町で、タイのバンコクから西へ350キロという場所にある。当時、ミャンマー・タイ・日本、3カ国共同で「ダウェー開発プロジェクト計画」があった。

「アジアのデトロイト(自動車産業の集積地)」と呼ばれるタイや、世界2位の人口を抱えるインド向けに自動車用の鋼材などを作るべく、一大コンビナートを建設して、日本企業が進出すれば、縮小する国内市場を補うと共に、東南アジアとインド方面に対する重要な橋頭保になるというアイデアだ。

 1兆円を超える巨大プロジェクトということもあり、結局現在に至るまで計画は進捗していないが、昨今、日本製鐵が国内の事業所を大幅に縮小するなどというニュースを聞くと、当時、これを本気で進めていれば、別の局面もあったのではないかと思ってしまう。

 記者がバンコクで松島さんの言葉にひかれたように、本書にも、背中がうずうずしてくる言葉の数々が散りばめられている。

「猪口才(ちょこざい)になるな」
「シリコンバレーの真似をするな」
「仕事と作業の区別」
「日本のほうが品質、技術水準が勝るという幻想」
「大学の先生こそ、授業ではなく事業」
「課題ピッチ=わらしべ長者型課題探索」
「システムメーキング」
「イノベーションとは死ぬことと見つけたり」
「ふるさとを愛する人に読んでほしい」

 本書は「教科書」とはいっても、対象は学生に限っていない。社会人が読んでも、目の前にある事業や仕事の進め方が「現状維持のままでいいのか?」と思っている人であれば、大いに感じさせられる部分がある。

 最後に、本書から問いを一つ。

 Q. (エジプトの)カイロで、カイロは売れるのか?

 暑い場所で、身体を温めてくれる「カイロ」を、どう売るかという問題。答えは本書を読んでのお楽しみ。

  
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