この熱き人々

2020年4月23日

»著者プロフィール
閉じる

吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 しかし、植物を取り巻く環境は昨今急激に変わりつつある。自然環境の変化、管理環境の変化、そして社会環境の変化と3つの変化に見舞われていると和田は言う。

 
 

 自然環境の変化は地球温暖化と異常気象。人々が年々実感しつつあるが、植物はもっと強い変化を感じているはず。たとえば桜の開花が年々早まっている。かつて桜前線は鹿児島から北上してきたものだが、今は東京が真っ先に開花したりする。

 「桜は秋に葉が落ちて眠りにつきますが、十分に寒さに当たることで目が覚め、あとは気温が上がるのをじっと待って花を咲かせるんです。以前は日本中、桜にとって十分な寒さがあったので、気温の上昇する順に桜前線が南から上がってきました。でも、暖冬で冬の寒さが足りないと花の芽が目覚めない。桜も混乱しますよね。どこで目を覚ましていいかわからなくなって各自判断するしかない。東京はまだ桜にとっての寒さが維持できているのでソメイヨシノが一斉に咲きますが、気温が1度上がったらバラバラに咲くようになるかもしれません」

 さらに、人手不足や財政難などで十分な手入れができなくなる管理環境の変化。コンクリートで固められわずかな表面の土から水を得るしかない都会の樹木は、雨不足や集中豪雨の影響も受けやすい。

 「表面に透水性のあるインターロッキングブロックを敷き詰め、その下にくるみ状の軽石を詰めて軽石の中に細い根が張れるような保全の仕組みも考えられています。都会の樹木は生きているだけで大変ですから」

 社会環境の変化には、花は楽しみたいけれど落ち葉で道路が汚れるのはイヤ、緑はいいけれど虫や雑草はイヤという人間のエゴも挙げられる。葉が落ちる前に剪定してしまう人間の都合ファーストの姿勢は、植物にとっては一大事。共に生きる意識が育たないと身近な緑の生存は厳しくなる。

 「東京はオリンピックのマラソンの暑さ対策で街路樹の枝を切らずに木陰をつくろうとしたけれど、札幌に変更されたから今後どうなることやら。木陰をつくる樹木の姿がいいねと気づいてほしいんですけどね」

 道を歩いていても〝不自然〟の中で懸命に生きている街路樹の健康状態が気になってしまうそうだ。弱ってくると葉が小さくなってくる。そんな木があると、おいおい大丈夫か? と声をかけたくなるという。

 ちなみに私たちにもわかる桜の健康チェック法はあるのだろうか。

 「ソメイヨシノは1つの蕾(つぼみ)に複数の花をつけますが、平均的元気さは4つ。それ以下だとちょっと弱っているし、5つ6つと花をつけていたらとても健康と言えるかな」

 満開の桜の下で酔っぱらう前に、根元を踏み固めて呼吸を妨げないよう気遣いつつ花の数を数えてみてはいかがだろうか。

石塚定人=写真

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆「ひととき」2020年4月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

関連記事

新着記事

»もっと見る