WEDGE REPORT

2020年2月21日

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極右思想、米国でも台頭

 今回の事件でもそうだが、この種のテロの特徴は移民や難民を“侵略者”と決めつけて攻撃を正当化している点だ。昨年3月にニュージーランド・クライストチャーチのモスクを狙ったテロでは、52人が犠牲になったが、犯人は「侵略者から白人の子供たちを守る」ことなどを動機としていた。

 また昨年8月、米テキサス州エルパソの商業施設で発生したテロでは、メキシコ人やヒスパニック(中南米系)の22人が殺害された。この時の犯行声明には「増え続けるヒスパニックの“侵略”に対する攻撃」と記されていた。犯人は白人至上主義に傾倒していたことが分かっている。

 米紙などによると、こうした“侵略”の陰謀論はフランスの右派の論客レナード・カマス氏の著書「乗っ取り」に大きく影響を受けているとされる。同氏の主張は欧州がアフリカや中東から急増する非白人によって“侵略”され、いずれは白人社会が乗っ取られてしまうというものだ。

 米国でも少数派やシナゴーグに対する襲撃やテロが続発しているが、これはトランプ大統領の差別的な言動により助長されている、とする専門家が多い。大統領はこれまでにもメキシコ移民を「レイプ犯」と決めつけ、イスラム教徒の入国を厳格化。白人至上主義を黙認し、不法移民を阻止するためメキシコとの国境に壁を建設中だ。

 大統領はとりわけ中南米からメキシコ国境に押し寄せる移民を“侵略者”と非難しており、この点は「侵略の陰謀論」を彷彿させる。米国内の極右によるテロ事件は今や、イスラム過激派によるテロの頻度をはるかに上回っているが、連邦捜査局(FBI)などの捜査当局は、イスラム過激派対策は強化したものの、極右の取り締まりは遅れているというのが実態だ。

 トランプ大統領はアフリカ諸国などを「肥溜めのような国」とけなし、自分に批判的な民主党の少数派下院議員らに対して「来た国へ帰れ」などと問題発言を繰り返してきた。ワシントン・ポストによると、こうした少数派蔑視の言動の影響は学校の現場にも及び、大統領の発言に触発されたいじめや嫌がらせが急増している。「大統領の分断と対立を煽るような政治手法が極右を刺激し、少数派へのテロの一因となっているのは明らかだ」(専門家)。今回のドイツの事件はトランピズムの負の側面を浮き彫りにしていると言えるだろう。

  
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