香港政府は、3月1日まで公務員は緊急性を要する業務以外、在宅勤務を実施させているほか、小中学校は(香港の中学校には日本でいう高校を含む)、すでに一時休校しているが何度も延長され、
その他、多くのイベントも延期・中止となっている。4月3日から日本代表も参加する予定だった7人制ラグビーの大会「香港セブンズ」が10月に延期し、映画の街らしくアジアでは有数の規模をほこる「香港国際映画祭」も夏まで延期。俳優で歌手の劉徳華(アンディ・ラウ)らの各種コンサートは軒並み中止となり、映画館では、観賞する際にマスクの着用が義務付けられた。
商業ビルやマンションなど、ほとんどの建物のエレベーターボタンにはビニールシートが張られ、そのシートを2時間に1回、ビルの清掃員が消毒をしているが、これはSARSの時と同じだ。地下鉄など、公共交通機関や人が混雑するところでは感染拡大を防ぐためにマスクの着用が呼びかけられている。筆者は先日、料理のガイドブックの『ミシュラン』の香港・マカオ版で星を獲得したレストランを取材したのだが、その時のPR担当者が「距離
が大事よね」といって自分の片手を先に伸ばした。私も片手を伸ばして最低1メートル以上の距離を確保したのだが、こういったことを自然としてくる。
このように、税関封鎖の件を含め、日本と比べると対策の徹底具合の差は一目瞭然だろう。
2次感染抑止を徹底する経営判断
2019年6月の逃亡犯条例改正案が発端となったデモで香港市民が外出を控え、中国人観光客も減少して観光業、小売、飲食関係がかなりの経済的ダメージを負った。その上に新型肺炎というダブルパンチに見まわれた。香港の2月の小売統計は4月に発表予定のため現時点でどの位に落ち込むのか不明だが、香港で鉄板焼店を経営している日本人に話を聞くと「デモが小康状態に陥った11月終わりから客が戻ってきて、12月、1月前半はかなり回復基調だったところ肺炎で再び客がいなくなった……」と嘆く。
香港最大のショッピングモール海港城や時代広場に行くと、筆者もサイドビジネスでモールの店を持っていた経験があるので「この客足だと、この先どうするんだろう…」という印象を受ける。コスメの激安店で中国人観光客御用達である「莎莎」という店は、普通の香港人夫婦が上場企業にまでのぼりつめた「ホンコンドリーム」を体現したような企業で、繁華街にはコンビニエンスストアのように店舗が広がっている。新型肺炎が起こって以来、入口で客は店員に体温を測られ、大丈夫であれば消毒液が手にかけられ入店が許される。この行為は、中国人どころか香港市民でさえ、入店するハードルを上げるだろう。しかし、売上が減少しても店員の健康と2次感染を考え、香港市民はこういう経営判断をする。
香港政府は2月14日に、250億香港ドル(約3600億円)の経済対策を発表し、2月26日には新年度の財政予算案を発表して、201