2024年12月3日(火)

WEDGE REPORT

2020年2月27日

 感染の拡大が止まらない新型コロナウイルス。日本ではダイヤモンドプリンセス号の対処方法が問題になっているが、その裏側で、乗員乗客合わせて約3600人が乗車した、ダイヤモンドプリンセス号とほぼ同規模の大型クルーズ船「ワールドドリーム号」が2月2日に台湾に向けて香港を出発していた。そしてその航海中に、1月下旬に行われた同船の航海ツアーに参加した中国人8人が、広東省での下船後にコロナウイルスに感染していたことが判明。船は急遽2月5日に香港に戻った。

香港で最も有名な通り弥敦道も人が減り、歩く人はマスクを着けている(筆者撮影、以下同)

 香港政府は検査が必要として、この8人と接触した乗員1800人の検査を実施。その間、乗客を含め1人の下船も認めなかった。そして、乗員に感染者がいないこと、香港出発時に乗船したツアー客は中国人と接触していないことから、4日後の2月9日に全員の下船を認めた。それ以降、ワールドドリーム号からの感染者は出ていない。

 ワールドドリーム号は乗員1800人の検査を4日で終わらせた上、その後同船からの感染者が出なかったという結果からすると、日本政府と香港政府の検疫レベルに差が出たことは否定のしようがない。

中国から来る人は全員14日間の強制隔離

 中国と陸続きの香港では、どうやって中国本土から来る人を減らすのかがポイントとなった。大変なのは公立病院の医療従事者で、感染のリスクを背負いながら治療をすることになる。中国からの来港者が多ければ香港の防疫が困難になることから、医師らが「医院管理局員工陣線」を組織し、中国との税関の完全封鎖を求めて2月3日からストライキを実施し、政府との話し合いも求めた。

 しかし、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、中央政府に気を使ったのか、中央政府の指示なのかはわからないが、税関の完全封鎖と話し合いは拒否。ストライキは継続され、香港市民を不安に陥れることになったため、林鄭行政長官にもプレッシャーがかかった。結果、段階的に税関閉鎖は進み、最終的には、2月8日以降中国から香港に入る人(中国人、香港人、外国人全て)に対して14日間の強制隔離を行うことを決定。驚くのは、湖北省を訪問して香港に戻ってきた香港居民については、カルロス・ゴーン氏の逃亡劇で話題に上ったリストバンド状の電子追跡機器を着用させて、自宅隔離させていることだ。2次感染を増やすくらいなら、ある程度の人権も制限する対策を施すのが香港のスタイルだ。

 中国人は言うまでもなく強制隔離などはされたくないため、香港に来ることがなくなった。結果、香港から17年ぶりに北京語があまり聞こえなくなった。筆者にとっては「あ~、昔はこんな雰囲気だった」とタイムスリップした感じだ。


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