2022年12月4日(日)

From LA

2020年2月27日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

マスク着用イコール重病、というイメージ

 米国でアジア系住民への忌避感が強まる原因のひとつに、マスク着用がある。米国人には元々マスクを着用する習慣がなく、マスク着用イコール重病、というイメージがある。2009年に新型インフルエンザ、いわゆる豚インフルエンザが流行した時も、米国内でマスクなどを着用する人はほぼ皆無だった。

 当時CDCに勤務する知人がいたが、その人物が飛行機でツアー客らしき日本人のグループと乗り合わせ、隣の座席に若い日本女性が座ったが、彼女がマスクを着用していたのを見て「自分が菌をまき散らす人間と思われているように感じた」と語っていた。CDCに勤務していても、マスクに対してはそういう認識しか持っていないのだ。

 理由として、マスクにはウィルス予防の役割があまり期待できないこと。ウィルスはマスクの織目よりも小さいため、すり抜ける。クルーズ船に検査に向かった検疫官や厚生労働省職員、さらに陽性患者を搬送した消防職員にまで感染したことを見れば、確かにマスクには予防という観点ではあまり効果的とは言えないかもしれない。むしろ重病者が少しでも飛沫などをまき散らすことを防ぐためのもの、というイメージがある。マスクを着用する人が忌避されるのはそのためだ。

 さらに米国では今シーズンのインフルエンザが猛威を奮っている。2019年末から2月までの感染者は2000万人を超えると言われ、死亡者数も1万6000人に上っている。この中に実は新型肺炎患者が混じっているのでは、という社会的不安もある。CDCでは今後インフルエンザの検査に訪れる患者に対し、疑わしい場合はCOVID-19の検査も併せて行うことを発表しているが、もし患者数が急増すればパニックが起こり、アジア系への謂れのない差別が加速する恐れも十分にある。

 トランプ政権はウィルス対策に25億ドルを投じる、と発表し、火消しに躍起だ。もし国内に感染者が増大すれば危機管理の出来ない指導者、というレッテルを貼られる。しかもロシアからと思しきフェイクニュースで「COVID-19のウィルスは米国による生物兵器で、試験的に中国にばらまかれた」とSNSなどへの書き込みがあることで、大統領のイライラが募っているとも言われている。

 カリフォルニア州だけではなく、米国全体でアジア系住民が差別されるのでは、という不安も高まっており、各州や自治体の対応が迫られている。

  
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